最高に頭が痛く気の重い読書だった件について/石井妙子『女帝 小池百合子』

 自分史上、最高に頭の痛い読書だったと思います。

女帝 小池百合子 (文春e-book)

女帝 小池百合子 (文春e-book)

 

一応、26日にライブ配信がされた討論会をここに貼っておきますね(なーんでテレビで大々的にやらないのかしら?)。

youtu.be

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縁あって参加している読書会のため『女帝 小池百合子』を読み終わりました。
まぁその、読んでいてめまいがしてきます。現状に吐きそうになることは何度もありますが、その極地ってこんな感じなんでしょう。

かわいそうだとは思う。けれどあまりにも被害者が多すぎる。

■印象は「毒婦」

読み始めて1/5くらい経った頃、私は小池百合子北原みのり『毒婦。』で描かれていた木嶋佳苗に似ているな、という印象を抱きました。読み終わって何年も経つので詳細はうろ覚えですが、

  • 壊れた家庭
  • 「貧乏」への恐怖
  • 「女性であること」を過剰に意識して育つ
  • 人との信頼関係を築く経験が浅い

という点は共通しているのかな?と思っています。

『毒婦。』を読んで得た木嶋佳苗の印象は、性別を理由にした人間関係で自分の承認欲求を満たしていたことです。彼女にはそうせざるを得ないほど、かつて追い詰められた青春を送っていた悲しさがあったように思います。

本書の記載内容をベースにすれば、小池百合子は虚言癖と虚栄心にまみれた父親の行動に振り回され、母親もそれを止めることができず、親が敷いたレールの上を歩かざるを得なかった。
父親は計画性のない行動のため、新規の事業に取り掛かっても長続きせず失敗ばかり、借金が嵩んでいつも通りの生活ができなくても、見栄があるから子供をお嬢様学校へと進学させる。しかし、ただでさえ近所の実業家の子息が通う場所、親の悪評が学校生活でも全く響かないことはなかったのでは...と著者は続けます。

■ややこしい「女性」

この本について話す上でものすごくややこしいのが「女性」であること。
経歴を見れば、日本国内で女性初の防衛大臣都知事の経験者、輝かしい経歴ですが、いずれも政策が表面的で実効性はないものばかりです。

読んでいて頭が痛かったのは、彼女が「どうせ女が政治家になってもろくなことはない」という悪いお手本になってしまっていることです。なぜなら小池百合子は「男性を内面化した女性」だから。思考回路が「男性を喜ばせること」に偏っていて、さらにタチが悪いのが、小池百合子自身が自らの「女性性」を活かすテクニックに長けていることです。
土井たか子さんと選挙を争った記述を読みながら、女性候補の対立を「女同士の闘いだ!」ってマスコミが騒ぐ流れは何十年も前から変わっていないんだなと思いました。こういうの、本当に鬱陶しいからうんざりしてます。

政治家の評価って後世の人間が行う務めの一つだと思います。

■なぜこの本を信じるか?

同じ本を読む尊敬する方から「自分はなぜこの本で書かれている内容を信じるのだろう、と思っています」とコメントをいただき、「本に書いてあることをすべて真実だと思うこと」についてぐるぐると考えていました。

書いてあることが嘘だとは思えません。緻密な取材、膨大な参考文献、何より、重要な情報提供者の勇気と、筆者の真摯な態度があとがきから伺えます。

私がこの本に書いてあることを信じたいと思う理由、それは「現状が悪いのは小池百合子のせいだ」と心のどこかで思いこみたいからじゃないか、と考えています(都民じゃないのにね)。
「あいつの/アレのせいだ」って言うと自分が「加害者」じゃないから楽になります。自分が怠惰だったり、間違えていたことを考えずにすみます。
どうせ読むなら、書かれたことを踏まえてさらに自分で考えたいものです。

■人間

とっても(本当に究極的で)個人的な経験則ですが、私は「年単位の深い付き合いと呼べる、同性の友人が一人もいない人間」はちょっと生き方を考え直したほうがいいと思っています。誰とも信頼関係が築けず、人間的な魅力を軸にした話が難しく、表面的な付き合いしかできないため、多人数に囲まれていてもいつも寂しい…。
こういった人は、えてして性別を理由にした付き合いのみしか続けられず、お互いを傷つけ合う恋愛関係にずぶずぶとはまりがちです。

こうした人間との付き合いはとても疲れます。

本書を読んでの小池百合子観は、私の経験上「最も警戒したい相手」とカテゴライズされるような人間です。
「こういう人こそ政治家にのし上がる」と言えばそれまでですが、本書の記述を参考とするに、人間としての器がだいぶ小さいとお見受けします。

現在でも十分に混乱している政治を、これ以上混乱させないために、「正しいリーダー」が選ばれますように。