4/17 神奈川の基地はどう動いたか 2020-21年春 スライド上映会 / 主催:相模補給廠監視団

4/17、「神奈川の基地はどう動いたか 2020-21年春 スライド上映会 」( 主催:相模補給廠監視団)に参加してきました。
盛りだくさんの内容で抱えきれないため、ちょっと書いておきます。

■上映会について
相模補給廠監視団では、毎年1月に「この1年、神奈川の基地はどう動いたか」をテーマに報告会を行っています。
対象は在日米陸軍相模総合補給廠だけでなく、厚木海軍飛行場横須賀海軍施設などの施設についても報告がありました。
今回はCOVID-19の影響もあり、開催が4月にずれ込んだ形となった、と主催の沢田さんからお話がありました。

以下、聞いた話と資料をもとに、印象に残った点をメモといただいた資料を元にざっくり書いていきます。
2時間に5名の報告が圧縮されていたこと、私自身神奈川県の米軍基地に詳しいわけではないので、聞いても全てを理解できているわけではなく(軍事用語満載...)、内容には細かい間違い等あるかもしれません。ご了承ください。

相模総合補給廠

報告:相模補給廠監視団(沢田政司さん)

まず、神奈川県の米軍基地は国道16号線に沿って存在している。
北は東京の横田基地から、南は横須賀海軍施設まで、在日米軍の中枢が置かれている。
例えば、横田基地から横須賀基地までは直線距離で約60km、これをヘリコプターで移動すれば約20分で移動できる(電車移動の場合は2時間近くかかる距離...)。

相模補給廠は一言で言うなら「巨大な物置」であるが、細かくみていくといくつかの役割がある。

戦時用資材の保管

作戦実行に必要な装備を置いておく役割。これは朝鮮戦争からアフガンでの作戦坑道まで、あらゆる事態に備えての物資・資材の備蓄がある。
(余談だが、朝鮮戦争ベトナム戦争の時期の補給廠は戦車や装甲車の修理工場も兼ねており、敷地には修理を待つ/終えた車両がずらっと並んでいたという)
例えば、給油を行うパイプラインセット、居住空間を提供するフォースプロバイダ(※俗称:ベースキャンプセット)、野戦病院セット等、その場で組み立てて作戦や生活に必要なスペースが作れる大きなセット。
いずれも大きなコンテナに入っているが、ここ数年はコンテナハンドラーという特殊車両で運搬していることが多い。


入れ物作り

上記の戦時用資材は野ざらしにされているわけではない。当然のことながら雨風凌げる保管場所が必要になる。
そのため、補給廠内はしょっちゅう足場が組まれて何らかの工事をしていることがある。特に築30年以上の建物が多いため、ここ数年で建て替え・修繕工事が続いている。報告の中では屋根の張り替えを重点的に行ったとあった。

 廃棄物処理

米軍の陸海空全てからスクラップが集められ、処分もされている。
廃棄物の処分サービスエリアもあり、かつてはアスベストが運び込まれて問題になっていた。
また、返還された共同使用区域は、これまでの監視活動の結果を踏まえると廃棄物の埋め立てを行なった場所である可能性も指摘できる。こうした廃棄物を米軍が適切に処理したかどうかは定かではないため、日本で土地使用前に検査をした時に新たな問題になる可能性もあるそう。
ちなみに現在すでに跡地利用でスポーツレクリエーション施設ができて解放されている。

 訓練基地化

「物資の保管庫」であるはずの補給廠だが、最近はヘリコプターの発着訓練を行っている様子が目撃されている。
航空法規定の300mを下回る高度で飛行するため、騒音がうるさく、さらには基地の外で訓練を行っている場面も度々見受けられる。
この話題については毎日新聞で特集が組まれている

mainichi.jp

キャンプ座間

報告:相模原市議・第一軍団の移駐を歓迎しない会(金子豊貴男さん)

キャンプ座間ではヘリコプターの爆風被害、自衛隊との共同使用、そしてゴルフ場にまつわる疑惑が問題になっている。

ヘリコプターの爆風

飛行訓練が日常的に行われているが、時折基地の敷地外で行われている。
監視のため、24時間で定点観測カメラを設置。夜間も飛行しており、サーチライトが木に当たるのがわかるほど低い高度で飛んでいる。
ひどい時には1時間に59回も騒音被害の記録が残ったこともあるそう。
2019年10月28日には、陸軍ヘリコプターのダウンウォッシュ(吹き下ろしの風)によって、20mほど下にあった住居にて室内の物品が飛散、ガラスが割れるなどの被害が出たことも。実害の訴えについて米軍は「ヘリの爆風によるものという証拠がない」と取り合っていないそう。
また、陸軍のヘリは苦情を踏まえて訓練の飛行コースを変えるなど配慮がみられるものの、厚木基地から飛来する海軍のヘリは全くそれを守る様子がない。

自衛隊との共同使用

キャンプ座間には米軍の中央即応集団司令部が配置されていたが、現在は朝霞に移っている。
その空いた部分に陸上自衛隊が入り、施設を共同で使っている。
ちなみに監視行動の結果、自衛隊員が訓練を行っている場面も確認されている。

ゴルフ場問題

キャンプ座間内には18ホールのゴルフ場があり、元々は基地内で働く人の福利厚生施設として作られたものだそう。
12年近く前からゴルフボールの飛び出しが問題になっており、ひどい時には年間300個ものボールの飛び出しがあり、近隣住民から苦情が出ていた。
これを受け、一旦ネットの修繕が行われたものの、よく見ると隙間だらけのため、2020年でも9件の飛び出しが確認されている。
また、最近は明らかに日本人と見られるプレイヤーが利用している様子が見られる。なんでも「名誉会員」になれば最低額600ドル/年(4/17のレートで約64,800円)ほどでプレイ可能だそう(ちなみに年間3000ドルのコースもあるとか、日本円に換算すると約324,000円...)。
さらにはこの時、ゴルフ場利用税を払っていない可能性があるそうなので問題になっている。
現在のキャンプ座間は全体で2000人ほどの従業員しかおらず、その中でもゴルフを行う方は一握り。これでは経営が難しいので日本人にも開放しているのでは? と話されていた。そもそもの「キャンプ座間の敷地返還」も長年訴え続けているため、今後も要望を続けていく。

厚木基地

報告:厚木基地爆音防止規制同盟相模原支部(山村充夫さん)

こちらの報告は動画をもとに実施。

この1年の動きに限っていえば、空母艦載機やオスプレイの飛来があったとともに、オートローテーション訓練などが行われているそう。
興味深かったのは、ヘリをウォッシュラック(機体洗浄場)で洗浄する様子。水が白い煙のようにもうもうと立っていたので一瞬火事かと思うほど。
(ウォッシュラックについては海上自衛隊下総教育航空群のこちらのツイートがわかりやすいかと)

また、飛行中の機体から目的地に向けて物資を投下するカーゴドロップや、ヘリに物資を直接吊り下げるカーゴスリングといった訓練が行われている様子もあった。

横浜ノースドック

報告:すべての基地にNOを!ファイト神奈川(星野潔さん)

盛りだくさんの報告内容だった横浜ノースドック。
米陸軍の輸送の拠点であるため、船や物資の出入りはかなり頻繁だった様子。

東富士演習場で使われたと思しき155ミリ榴弾砲が剥き出しのまま積まれていく様子、給油タンカーの停泊、音響測定艦弾道ミサイル観測船の出入りなどが報告。

ちなみに北富士演習場では今年3月の射撃訓練中に火災が発生したそうで、ニュースになっている。

www.at-s.com

youtu.beお話によると、米陸軍は兵器や資材を事前に大量に配備するAPS(Army Prepositioned Stock:米陸軍事前集積物資)の拠点を世界に5箇所(APS-1〜5まで)設けており、このうち横浜ノースドック・相模補給廠、韓国の大邱APS-4を形成している。
米軍のこうした備蓄は21世紀に入ってから始まっているそう。

また、ノースドック内に運ばれる物資や行われる訓練については、横浜市の基地対策課ウェブサイトに記載がなかったこともあるそうで、市民が知る機会がないことはおかしいと話があった。

横須賀基地

報告:非核市民宣言運動・ヨコスカ(新倉裕史さん)

原子力空母ロナルド・レーガン

定期修理によって生じた放射性廃棄物の搬出が4月中旬ごろと言われていたそうだが、4月16日現在動きはない。

そもそも日本は原子力空母が入港する際、日本国内の港で修理しないこと、廃棄物を出さないことを条件に許可したというが、実際は港で修理もするし廃棄物も出している。

イージス駆逐艦 ラファエル・ペラルタ

2021年2月4日に配備されたイージス駆逐艦
名前の由来はラファエル・ペラルタ軍曹から。
ラファエル氏は市民権を得るために海兵隊に入隊した人で、2000年に海兵隊新兵訓練所を終了。その後歩兵と狙撃兵の訓練を積み、2004年に偵察隊のリーダーとして「イラクの自由作戦」に派遣される。作戦中、銃撃戦で投げ込まれた爆弾を抱え込んで爆死。周囲への被害を抑えたそう。2012年に海軍長官が彼の栄誉を讃え、駆逐艦に名前を冠すると発表。

「今の米軍がやっていることを象徴するような」という新倉さんのお話に、言葉が見つからない。

またラファエル・ペラルタの航海日誌を見てみると、明らかに中国を意識した動き方をしている。

また、海上自衛隊には米軍の「武器等防護」を行う任務がある。これについては国会の承認を経ずに軍事行動を可能にするものであり、自衛隊の動きが市民に知られることがない点は重大な問題である。 

特に浦郷弾薬庫(後述)に拠出される先制攻撃用の巡航ミサイル・トマホークを自衛隊が防護する形になったことがあり、これは本当に良いことなのか。

浦郷弾薬庫

名前の通り、弾薬や科学兵器等の備蓄をしている浦郷弾薬庫。
敷地周辺には物品の危険度と「ガスマスク着用」を促す警告看板が置かれている。
米国の法律では、こうした弾薬庫の半径550m以内に住宅があってはならないとされている。しかし、浦郷弾薬庫は中心から半径500m以内に500戸以上の住宅が立ち並び、すでに十分な危険性を孕んでいる。

印象的だったのは「そもそも旧日本軍には基地周辺の近隣住民への安全を配慮する発想がない」という話。
浦郷弾薬庫は旧日本軍の設備を米軍が引き継いで使用したものの一つだそうだが、立地を自国の法律に合わせて見直す...とはしなかったのだろうか。

イージス艦とイージス・アショア

イージス・アショアとは、簡単にいうならイージス艦と同じ機能を地上に設置すること。そもそものイージス艦の機能は下記の通り。
・4面固定レーダーで360°の範囲を監視
・100を超える目標の探知・識別・追尾を同時に実施
・最適な迎撃ミサイルの選択をコンピュータが瞬時に処理し
・同時に10目標以上を垂直発射管で攻撃できる
だが、団体で調査したところ、イージス・アショアは年間123日しか動いておらず、これでは年間の2/3は稼働していないことになる。そもそもミサイル防衛をする気があるのか?と疑問に思うような運用がされていると指摘あり。

また、海自が持つ7番目のイージス艦「まや」自衛艦はつの「CEC・共同交戦能力」を搭載。米駆逐艦との共同作戦が行われることへの危惧や、そもそも「共同交戦能力」自体自衛隊が持ってはいけないシステムなのでは。という疑問も湧く。

自衛隊員の海外派遣

聞いていて辛かった話だが、自衛隊員の海外派遣はあらゆる任務の中で最も自殺者が多いそうだ。
理由としては、昨今の海外派遣は目的がはっきりしない任務が多く、そのために休憩時間0の状態を何ヶ月も経験しなければならず、辛いものがあるためだという。
例えば阪神淡路大震災や3.11のような災害救助任務は、危険度の高い過酷な状況下での作業だったにもかかわらず、当初の想定よりも心的外傷後ストレス障害PTSD)の発症数が少なかったそうだ。これは「人命救助」という目的がはっきりしており、実際の活動でも「ありがとう」と言われることがあり、やりがいがあったことが要因として考えられる。
対して海外派遣は、何のために行くのかわからず、責任は現場の人間に押しつけっぱなし、さらに国民の支持も得られない状態が任務中の過酷さに拍車をかけるようだ。「実績が欲しい政府に振り回されているのでは」と自衛官からも声が上がるほど。

最後に

こうした基地の動きがなぜわかるのかというと、報告者の方々がそれぞれ監視活動を行っているからでもあります。日々の活動に改めて敬意を表します。

また、取り急ぎのアウトプットを優先したため、細かい内容は後日補足・修正する可能性があります。ご了承ください。