【参加レポ】12/10・ビブリオエイト 〜王者の祝祭〜に参加してきました

こんにちは。猫子です。

昨日、BiblioEi8ht(ビブリオエイト)さん主催のビブリオバトルに参加してきました。

東京の西部を中心に活動されているBiblioEi8htさんは、毎年年末に"チャンプカーニバル"と称して「その年にチャンプ本を獲得した方のみが参加できるゲーム」を設定しています。

チャンプを獲得された方によるグランドバトル!面白くないはずがない!
というわけで伺いました。

ちなみに花岡は一般の部で参加しました。

第1ゲーム "チャンプ・カーニバル"

12/10 第1ゲーム紹介本一覧

ただ、当日は中央線で人身事故があるなど路線トラブルが相次ぎ、多くの参加予定の方が遅れるという事態に。

急遽予定を変更し、人数が揃った"チャンプ獲得者限定バトル"を先に開始することに。

紹介本は次のとおり(★がチャンプ本です)

1. オルナ・ドーナト『母親になって後悔してる』(2022, 新潮社)
★2. 熊谷晋一郎『リハビリの夜』(2009, 医学書院)
3. 三浦しをん『星間商事株式会社社史編纂室』(2014, ちくま文庫
4. ロバート・コルカー『統合失調症の一族: 遺伝か、環境か』(2022, 早川書房
5. 増田薫『いつか中華屋でチャーハンを』(2020, スタンド・ブックス)

1冊目はオルナ・ドーナト『母親になって後悔してる』。「今年一番、タイトルを見てぎくっとした本です」とご紹介いただきました。
著者はイスラエルの方で、タイトルの通り「母親になったことを後悔している」女性にインタビューを実施しまとめたものです。
イスラエルは日本以上に女性に対する「結婚して子供を産むもの」という社会的な圧力が強く、下手をすると中学生の段階で「何歳までに誰々と結婚して子供を産んでね」と声をかけられるのだとか。
仮名で答えてくれた女性たちの年代も様々ですが「子供は愛しているし夫も尊敬している。けれど、母親にならなかった人生も想像することはあるし現状を後悔している」という切実な気持ちを吐露し、著者に笑顔を見せていたところが救い出そう。

2冊目は『リハビリの夜』。
脳性麻痺の当事者で医学博士の方によるエッセイ...とまとめて紹介するのがなんだか難しそうな本でした。体の自由が大きく制限される中、どのように日常を感じて過ごしているのかを明晰で分かりやすい言葉で綴られており、読みやすいそうです。
紹介者の方曰く「エッセイでありながら医学書であり哲学書であり...ジャンル分けが難しい」「自分はまだこの本をきちんと理解した状態ではない。あともう1回は読まないとわからないんじゃないか」だそう。

3冊目は『星間商事株式会社社史編纂室』。
川田幸代29歳、社史編纂室勤務。ゆるゆるの職場でそれなりに働き、趣味(同人誌作り)に熱中できるはずだったのに...社史編纂の過程でわかる会社の謎の空白期間、なぜか入る邪魔、濃ゆい同期に後輩先輩、うっすら匂う陰謀……笑いあり涙ありの冒険をお楽しみあれ!

4冊目は『統合失調症の一族』。原題は"Hidden Valley Road"(意味としては隠された、あるいは知られざるバレーロード?)といい、タイトルの時点で統合失調症という表記は無し。
アメリカで実在した、長男をはじめ、次々と子供たちが統合失調症を発症していった家族を描いたノンフィクション。
プレゼンで軽く聞いても非常に荒んだ家族模様が想像できたのですが、凄まじいのは、この家に生まれた一番下の妹さんが「うちのことを知ってください」と、かけるライターさんを探して関連資料を全て渡して関係者への説得も済ませたという点。
個人的にもずっと読んでみたかった1冊。さていつ読もうかな。

5冊目は『いつか中華屋でチャーハンを』。
「面白いTシャツを着て、表紙が黄色い本を紹介すればチャンプ本を獲得できる」と験担ぎをしながらのご紹介。
食レポをつづったグルメマンガですが、著者が追うのはスタンダードな中華料理ではなく、あえてカレーやオムライスといった「主役じゃないもの」。"大阪のカツ丼はあんかけに沈んでいる"?"山菜ならぬ酸菜に注目"?"福岡のダル麺が美味しい"?などなど。ローカルな目線で語られる「そんなのあり?」な中華料理を召し上がれ(書きながらお腹減ってきました)。

チャンプ本は『リハビリの夜』に決定。見事に黄色い表紙の本でした。

第2ゲーム "フツーのビブリオバトル"

第2ゲームチャンプ本一覧

休憩を挟んでの第2ゲームは普通のビブリオバトル。一般の部となります。私も参加させていただきました。

紹介本は次のとおり(★がチャンプ本です)

★1. 樫崎茜『手で見るぼくの世界は』(2022, くもん出版
2. ケイシー・マクイストン『赤と白とロイヤルブルー』(2021, 二見書房)←私です
3. 日経サイエンス編集部『「戦争」の現在 核兵器サイバー攻撃・安全保障(別冊日経サイエンス251)』(2022, 日経サイエンス

1冊目は『手で見るぼくの世界は』。
紹介者の方によると、昨今の児童書業界はラノベ色が強く、文学的な作風のものが少なくなってきているのだとか。著者の樫崎さんは直近の児童文学作家の方の中でも一押しだそうです。
視覚支援学校に通う佑は、この春から中学1年生。しかし、ずっと親友だった双葉が春休み中に通行人とぶつかり、怒鳴られ白杖を投げ捨てられてしまったことから音信不通になってしまったことがずっと気にかかります。なんとか会いに行きたい佑は苦手な白杖の訓練に挑戦しはじめますが...。
視覚障害のある子どもにとっては、コンビニにお菓子を買いに行くことだって大冒険で楽しいこと。生き生きした子供達の会話を通じて、読み手に視覚障害者のリアルを引き寄せる点が魅力だそうです。

2冊目は私が紹介しました!ケイシー・マクイストンさんがお書きになった『赤と白とロイヤルブルー』。発売後にTwitterで話題になったのでご存じの方もいらっしゃるかもです。
取り急ぎお伝えしますと、もしこの本を読破した方がいらっしゃれば、イラストを担当された加藤木麻莉さんのTwitterのメディア欄を確認してください。表紙絵の元と裏話が出てきます。私はこれを見て歓喜のあまり叫びました。装丁デザインの勝利です。

3冊目は日経サイエンス『「戦争」の現在』。今年4月に刊行された1冊。
中身は海外の論文を翻訳しただけあって、専門用語てんこ盛り。非常に硬派な内容のため読了に時間はかかったそうですが、ウクライナ危機がクローズアップされる中、最新の研究成果を把握するには良い1冊となりそうです。

第3ゲーム "擬人化ビブリオバトル"

第3ゲームはオンラインでの参加者も交えてのバトル。
"擬人化ビブリオバトル"は今回初の試みだそうですが、本の紹介時に「この本を擬人化するならこんな感じ」という話を必ず入れるというもの。

紹介本は次のとおり(★がチャンプ本です)

★1. 群馬直美『葉っぱ描命(かくめい)』(2021, 燦葉出版社
★2. 西谷格『香港少年、燃ゆ』(2022, 小学館
3. ホークマン(原作)、メカルーツ(作画)『ニャイトオブザリビングキャット』(2021, マックガーデン
4. ガブリエル・パチェコ『ものがたり 白鳥の湖』(2017, エディション・エフ)
5. 伊坂幸太郎『マリアビートル』(2013, 角川文庫)

1冊目は『葉っぱ描命』。擬人化するなら「革命家、でも白い毛が生えていたり、山吹色だったり、いい匂いがしたり、ポケットにみかんを入れているかも」。
精密な植物画を描く群馬直美さんの作品集で、イラストの横にエッセイが記載されているそうです。オンライン越しでしたが、長ネギの根っこ一本一本まで丁寧に描写されており驚きました。原画を拝見できる機会があれば嬉しいです。

2冊目は『香港少年、燃ゆ』。今月出たばかりの新しい本です。
擬人化するなら「青年になりかけている少年。そっぽを向いて表情は曇っているような感じ」だそうです。
著者の西谷さんは長年香港を追い続けているフリーライター民主化を求めるデモの現場で15歳の少年:ハオロンと出逢います。彼は理想に燃える若者...ではなく学校をドロップアウトし、兄弟もたくさんいるがお金はない、難病の母親とは不仲、怠惰に釣りをして過ごし、西谷さんの泊まるホテルに転がり込んでくる...。図々しくずるいところもある彼と共に行動し、現実のままならなさと時間の経過、大きく変わってしまった都市の未来を考えずにはいられなかったそうです。

3冊目は『ニャイトオブザリビングキャット』。擬人化するなら「SFが大好きな陽キャのおじさん。自分は苦手なタイプだけど猫好きという一点であれば意気投合できる!」という印象だそう。
「突然変異の猫の誕生により、人間が猫になってしまうウイルス」が蔓延する世界で、数々の猫から逃げながら生き延びる人々が主人公。私も1話を試し読みしてみましたが、リアルな猫描写や豆知識から、著者の相当な猫好きと愛が伝わってきました。
現在も連載中であり、今後の続きが楽しみな1作だそう。
試し読みはこちら↓

magcomi.com4冊目は『ものがたり 白鳥の湖』。擬人化するなら「一人っ子でハイスペックな息子の母親」。バレエの演目としても有名なお話で、オデット姫に注目が集まりがちなところ、本質は王子の成長物語のため、読むときの視点が「王子の母」になりがちだと話されていました。
出版社は京都にある「エディション・エフ」、お一人でやられているそうです。
絵本のほか、フランスにまつわる本の出版に強みを持っている様子。ウェブサイトもフランス語表記がされており独特な雰囲気です。

editionf.jp

5冊目は伊坂幸太郎の『マリアビートル』。これは紹介者の方の話がべらぼうに面白かったです。
擬人化するなら「大学のサークルの後輩、黒髪でおとなしめな女の子だけど、雑学に強く、東京から仙台までの家族旅行の話が鉄板ネタ。淡々とした語り口だけど、ただの家族旅行が殺し屋だらけのバトルロワイヤルになっちゃうのがたまらなく面白い。最近海外に行っていたらしく、久しぶりに会おうよと声をかけてあってみた所、髪の毛はどぎついピンク色に染まり、鉄板ネタは東京から京都に行く話に大きく変わっていた...」。
ここまでサラサラと話されるので、本当にこういう後輩がいらっしゃるのかと途中まで勘違いしていました...。

ブラッド・ピット主戦の映画「ブレットトレイン」として映画化もされた本作。
小説は淡々とした語り口で、王子の怖さがより引き立ちますが、映画は赤青のネオン輝くエセ日本にド派手なアクションが加わったジェットコースタームービー。
私は小説の途中で映画を観て「これもええやん!」と思ったので、楽しく紹介してくださる方がいて嬉しかったです。

www.sonypictures.jp

とても楽しかったです。
みなさん、良いお年を〜〜〜。