こんにちは。猫子です。
悔しい。もう4月じゃないか。
こんなになるまで2月分の振り返りを放置するなんて、我ながら情けない。
ただ、2月は本にせよ映画にせよ思ったよりも読めたり見れたりしたので非常に充実はしていた、気がする。
書籍編
アンディ・ウィアー 『プロジェクト・ヘイル・メアリー』下巻
図書館で予約してから、およそ1年ほど待っただろうか。
上巻を読み終わってから時間も経っての読書となってしまったが、それでも経過した時間を全く感じさせず続きから集中できた。
予期せぬ&奇跡的な遭遇から更なる探求と困難、明らかになる「自分がヘイル・メアリー号に乗っている理由」、後半は読みながら泣き、お話がひと段落した先でまた脱力するように涙が止まらなかった。
友人知人には「宇宙のことよく知らなくても面白いから!」という言葉を枕に紹介しているお話だ。
詠里 『僕らには僕らの言葉がある』
友人からのおススメで購入。
高校初の「インテグレーション生」として、入学式で手話を使って挨拶をした"ろう"の相澤真白。「野球さえできればいい」と聞き流していた健聴者の野中宏晃は、放課後の野球部でピッチャー希望の新入生としてやってきた相澤と再び出会う。バッテリーを組まされ「こんなやつ別に...」と思っていたが、相澤が自分に向かって投げたボールを受けて出た言葉は「ナイスボール...」だった。
僕らには僕らの言葉がある 詠里(著/文) - KADOKAWA | 版元ドットコム (hanmoto.com)
以上の紹介は版元ドットコムの「紹介」欄を参考にまとめたもの。
読みながら、学生の時に手話で会話したときを懐かしく思い出した。
正直、自分は手話を教わるだけであまり何もできなかったと思う。
けど、手話が通じたとき・読み取れた時のうれしさ、「ちょっと手話ができるからってろう者のことをわかった気になるなよ」と言われて落ち込んだ時(※でも言われて初めて気が付いたので今ではいい経験だと思っている)、久しぶりに会った先輩と話したら「指文字早くなってない?」と言われて驚いたこと、ざっと思いつくのはこのあたり。
好きなのは、野中君のお母さんが初めて相澤君に会った時のシーン。
そりゃ初めてろう者に会ったらどうしたらいいかわからないよね、と思いつつ、それでも冷静に対応した相澤君や、若干の照れくささを抑えてお母さんとしっかり話そうとする野中君の様子がすごくよかった。
つまり一つの青春を丁寧に描いているのだ、実によい。
調べたところ作者さんご自身のnoteもあるので、こちらもぜひ。
『僕らには僕らの言葉がある』出版に寄せて|詠里 (note.com)
佐藤二葉 『アンナ・コムネナ』4巻
わーい『アンナ・コムネナ』の新刊だー。
読者としては「大切なものが違う姉弟のすれ違い」を見ている感覚なのだけど、時代の流れも相まってどんどんきな臭い方向に行ってないか、生きてよ!?ねぇ!!!
九井諒子 『ダンジョン飯』1巻〜
※この文章を書いている時点では最終巻まで読めていません。
アニメが面白くて「そういえば単行本買っていたよなぁ~」と押し入れまでひっくり返しても本が見つからず、結局本屋さんで全巻腕に抱えて丸っと買いなおした。
やっぱり本は売ると後で後悔するものなのかも...。
最初は単純に「その魔物、どう食べる?」という点を突き詰めていく過程が興味深くて読んでいくが、お話としては単行本4巻の終わりからが本番。
いったん解決に見えた「ファリン救出劇」がぐるりとひっくり返されていき、随所に挟まれた「このダンジョンの成り立ち」の伏線が立ち上がり、さらにはダンジョンを目的に新たな勢力も混ざってきて...という群像劇としての性格が強まる...けれど魔物グルメな部分は最後まで変わることがない...すごい、ぶれない、というのが現時点での感想である。
張六郎 『千年狐』6巻
ゆるゆるなテンションとシリアスのバランスが絶妙な中華古典ギャグファンタジー漫画、ゆっくりペースで読んでいくけど、どこかで一気読みしてどっぷり浸りたいとも思う...。
ダニー・ネフセタイ著、永尾俊彦構成 『イスラエル軍 元兵士が語る非戦論』
パレスチナで起きていることがあんまりにもあんまりなので、何かしないと!と思って取り急ぎ購入した一冊。
あくまで著者のダニーさん目線ではあるけれど、イスラエルの中で起きている教育や習慣がほとんど「行き過ぎた愛国教育」のようなもので、最終的には「国のために死ぬのは素晴らしい」と言っているのではないか?という点は読んでいてやるせなかった。
ちなみに、パレスチナで起きている虐殺を止めるためにできることはものすごくいっぱいある。ぜひとも下記のドキュメントを参考にしてほしい。
ちなみに私は下記のサイトでクリック募金をするようにしている。
トミイマサコ『トミイマサコ作品集 トミドロン』
トミイマサコさんといえば『コカチン』の表紙をネットで見かけて購入したほど吸引力がある絵柄だなぁとおもっているのだけど、『これ描いて死ね』(※後述)のとよ田みのる先生のパートナーだったとは気が付かず...。
コカチン 佐和 みずえ(著/文) - 静山社 | 版元ドットコム (hanmoto.com)
のびのびと思い思いに描いたプライベートの作品も、テーマに合わせた装丁用の作品もどれも見ごたえがあって、とにかくずっとめくっていて幸せな一冊。
とよ田みのる 『これ描いて死ね』5巻
これも大好きな漫画。
漫画同好会も新たなシーズンに突入、さらに新入部員があらわれたけど、正体は意外な人物で...。
描く人、読む人すべてにエールを送る快作。最後まで駆け抜けてほしい。
映画編
ダム・マネー ウォール街を狙え!
COVID-19の影響でロックダウン敷かれていたアメリカで実際に起きた「ゲームストップ株騒動」が題材の映画。
米ゲームストップ株騒動 日本のカリスマ個人はこう見た - 日本経済新聞 (nikkei.com)
金融?株?空売り?よくわからない...と思っても大丈夫。
テンポよく話が進む中で「お父さんの勤め先が空売りにあっちゃって、何年も働いたのに年金がなくなって、結局死ぬまでしごとしなきゃいけないんだよね」と話す子がいるので、カラ売りの影響を実体験としても想像できるようなエピソードが盛り込まれているのだとても良い。
ただね、ギャグの8割近くが下ネタなのでその点だけ注意。
ファースト・カウ
劇場で見終わり、明かりがついた瞬間「期待はずれだったわぁ~」と言いながら立ち上がるご婦人がいらっしゃった。
いや、その気持ちもわかる。
けどちょっと違うんだ、面白くないわけじゃないんだ。
「はぐれ物の開拓者2人が、はじめてアメリカ大陸に輸入された牛から夜な夜なミルクを絞ってドーナツを作って売ってがっぽり儲けようとする」というあらすじがすでにとってもいいんだけど、いわゆるアクション大作じゃないんだ。
評論家からは小津安二郎の系譜につらなる映画作家として言及されるケリー・ライカート(筑摩書房のPR誌「ちくま」No.634であの蓮實重彦が褒めちぎっていて何事かとびっくりした)だもの、画面比率3:4のコンパクトな中でじっくり静かにドラマが展開していく。
画面に映らないと頃もたくさんあるんだけど、それはそれで映らないなりに想像力を掻き立てられる作りになっている。
あと、えらそうな総督のおっちゃんの奥さんが先住民の女性なのだけど、男性陣が外に出た瞬間、首長と来ていた女性と待ちかねたかのようにお話しする様子がいちばん胸に来たというか。すごいというか。ちゃんと抑圧の合間を縫って自分の気持ちを守っている強かさを感じたというか、おもっていた以上に描き方の目端が利いている映画だなと思うんだ。
こういう話がもっとしたい。
でも、一旦今回はここまで!