こんにちは。猫子です。
前回の記事で「11月のビブリバトルについては別途書きますが...」と書いておきながら8ヶ月近くも放置してしまいました。
何やってんだ。
自分でも蹴りをつけるため、Twitterの記録を元に、2025年11月2日に紀伊国屋書店新宿本店で開催されたビブリオバトルについてまとめてみたいと思います。
★がついているものがチャンプ本です。
第1ゲーム
1. パーシヴァル・エヴェレット『ジェイムズ』
★2. 高畑鍬名『Tシャツの日本史』
3. 武田淳『コーヒー2050年問題』
4. リンジー・フィッツハリス『顔を失った兵士たち』
ゲームについて
なんと、私が紹介した『Tシャツの日本史』がチャンプ本となりました。
投票いただいた皆さんに改めてお礼申し上げます。
私は2010年から紀伊國屋書店のビブリオバトルに参加していますが、初のチャンプ本獲得です。嬉しい!!!
参加歴が長いので、友人・知人からは「えっ!」と言われたんですが、自分の記憶では紀伊國屋では選ばれたことがありませんでした。
この点は後ほどゲームに関わったスタッフから伺ったんですが、2013年ごろからの開催の記録を確認したところ、私の紹介本がチャンプ本に選ばれたのは今回が初だったそうです。
日本国内150年の男性のファッションに焦点を当て「Tシャツをズボンにインするのか?アウトにするのか?」という問いを中心に、服装論のみならず若者論・メディア論までを展開していく1冊です。
↓調べたら著者の方のインタビューがありました。
dot.asahi.com
さて、このゲームについて書いていきましょう。
『ジェイムズ』はマーク・トゥエインの『ハックルベリー・フィンの冒険』に出てくる黒人キャラクターのジムを主人公に据え、元々の作品では「ちょっとおバカな黒人」として描かれている彼が「本当はきちんと言葉も理解して理性的に考えられる人間だったのでは?」・「けれど賢いことがわかると大変だからわざとバカなふりをしている」という過程で描かれた冒険譚です。名作に新たな光を当てる視点が良いですね。
『コーヒー2050年問題』は、昨今高騰しているコーヒーについてのお話です。
「2050年にはコーヒー栽培に適した土地が今の半分になってしまう」という問題があるそう。では何ができるのか?という解決策を探る一冊。
紹介者の方がおすすめのコーヒーのラベルを貼り付けたノート(?)を持ってこられており、姿勢から愛を感じました。
『顔を失った兵士たち』は、第1次世界大戦で顔を負傷した兵士たちの治療に奮闘した人々に焦点を当て、形成外科の歴史、そして医師と患者の熱いドラマを描いたノンフィクションだそうです。
戦時中の患者はほぼ男性ですが、戦後はその技術が女性の美容外科に応用されていく過程があるそうで、読み物としても魅力的です。
今も世界各地で続く戦禍でも確実に起きているであろう顔の負傷、この本は買いました。
第2ゲーム
1. 太田宏明『ばんえい競馬 砂の軌跡』
★2. 松本祐貴『ルポ 失踪』
3. ヨシタケシンスケ『あるかしら書店』
4. 宮野真生子・磯野真穂『急に具合が悪くなる』
ゲームについて
こちらも注目本が目白押しでした。
『ばんえい競馬 砂の軌跡』はばんえい競馬の写真集。
北海道の十勝地方で行われている、ばんえい競馬の様子をおさめた写真集。
体重が1トンを超える輓馬(ばんば)たちの勇姿が収められ、どの写真も見応えがあります。
www.banei-keiba.or.jp
『ルポ 失踪』は実際に失踪を経験した人、家族が失踪した人を含め他6人に取材をしたノンフィクション。
バトル参加後に購入して読みましたが、根掘り葉掘り聞いていくほど、湧き水のように出てくる「人生」のエピソード。うわぁ、こういうことあるんだ...と1人分読み終わるたみにちょっと遠い目になりました。
紹介者の方のお話で印象的だったのは「日本では毎年9万人近くの行方不明届が出ているそうですが、そもそも届出すら出ていない人もいる」ということ。「この書籍に出てくる人は全体から見れば「氷山の一角」ですが、こういう生き方もあるんだ、ということで、誰かのお守りになったら嬉しい一冊です」。
そういえば、日本国内の失踪を題材にしたドキュメンタリー映画「蒸発」というものがありましたね。
aggie-films.jp
映画本体を観れてはいないのですが、このビブリオバトルの後に予告編を見る機会があり、なんだか妙なつながりを感じました。
『あるかしら書店』は、とあるおじさんが営む「あるかしら書店」が舞台。
例えば「ちょっと珍しい本はあるかしら?」というお客様には「2人で読む本」をお勧めするなど、お客様の注文に応えていきます。
紹介者の方によると、読んでいて「世の中のすべての本は、自分が生きている間に読み切ることができない」と気がついてしまい......その気持ちが作中の水中図書館の様子とともに印象に残ったそうです。
『急に具合が悪くなる』は、現在絶賛公開中の映画「急に具合が悪くなる」の原作本ですね。
www.bitters.co.jp
私は昨年のこのバトルで知ったので「おお、映画化だー」と思っていました。
(家族が観に行って「面白い」と言っていたので気になっています)
内容は哲学者と人類学者のお2人が交わす往復書簡です。病を抱えたことで「死」が自分に迫る問題として立ち上がった方の、一人称で描いた記録という一面もあるそうです。
往復書簡という特性上、話の流れを修正しきれない故の「事故」は起きてしまいがち、後半でその話が話題に上がり、コミュニケーションに関しても考えさせられる記述が続くそうです。
第3ゲーム
このゲームはビブリオバトル全国大会のブロック決戦として行われました。
zenkoku25.bibliobattle.jp
というわけで、このゲームで本を紹介してくださる方は全員学生さんでした。
1. 住野よる『青くて痛くて脆い』
2. 秋山祐徳太子『恥の美学』
3. 小山宙哉『宇宙兄弟』
★4. 武田惇志・伊藤亜衣『ある行旅死亡人の物語』
5. 舘野仁美『エンピツ戦記 誰も知らなかったスタジオジブリ』
ゲームについて
全国大学ビブリオバトルへの出場権を賭けた熱い戦いでした。
『青くて痛くて脆い』、映画化もされましたね。
youtu.be
人を傷つけないために相手の言うことを否定しない、という主人公が大学で出会ったのは「この世に暴力は必要無いと思います」と大声で先生に質問する、独善的な印象が強い学生。
なんとなく仲良くなるうちに「なりたい学生になろう!」というサークルを立ち上げますが…。
理想論に振り回される大学生達のお話だそうです。
苦い話ではあるが、理想を追い求めて行動する時ってすごく楽しくて生き生きとすることもあると思う。単に「若いなぁ」で終わらせない魅力がありそうでした。
『恥の美学』は、数々の伝説的なパフォーマンスを行ったアーティスト・秋山祐徳太子によるエッセイ集。
例えば、市場調査のために外出し、文部科学省の前で二宮金次郎の格好で立ち尽くす。美術展に立方体の檻を出し、その中に入って10日間眠り続ける。東京都知事選に出馬して資金繰りに苦労する.....など、アーティストなので「パフォーマンスをすること」が(ある意味)仕事とはいえ「恥ずかしい」ことは山のように経験してきたという著者。
では羞恥心がないのか?というとそんなことはないそうで、著者曰く「実はとても恥ずかしがり屋」だそう。では「恥」ってなんなのか?と問い直すエッセイ。
紹介者の方のお話で印象に残ったのは「何か新しいことをして恥ずかしいと思うことを心配するなら、秋山祐徳太子というとても恥ずかしいことをしたおじさんがいることを思い出して欲しい」ということでした。
bijutsutecho.com
『宇宙兄弟』は説明不要の大ヒット漫画ですね。
主人公はとある理由で上司に頭突きをかまし、仕事をクビになって実家でクサクサしているムッタ。
心配した母親が勝手に宇宙飛行士選抜試験に応募しており、諦めかけていた宇宙飛行士を目指す予想外の展開に転がっていきます。
読み始めは正直すぎて大丈夫?と心配していた主人公を、気がつくと応援している自分がいる。この漫画を読んでから、苦手なことにも積極的に挑戦する自分がいるそうです。
『ある行旅死亡人の物語』。
そもそも行旅死亡人とは、旅先などで亡くなられ、身元不明となった方を指す法律用語だそうです。
この本は、右手の指をすべて欠損し、現金3,400万円を残して1人で亡くなられたとある女性について書かれたノンフィクションです。
元々は、新聞記者のおふたりがネタ探しのために官報のデータベースを見ている際「行旅死亡人の所持金ランキング」を眺めて気がついたのがきっかけだそうです。
kouryodb.net
ビブリオバトル以前に知る機会があり、どうしても気になって読み終えた1冊です。
単なる「行旅死亡人」だったとある人が、地道な取材と調査を重ねることで「確かに生きた1人の女性」として立ち上がってくる過程がスリリングかつ切ないものでした。
『エンピツ戦記』はスタジオジブリに入社されたアニメーターさんによる成長記録。
有名なジブリ作品の舞台裏が見える1冊で、「究極の映画職人」とも言える宮崎駿の言葉は読んでいて刺さり、打ちのめされるような強烈なものだったそうです。
思い返せば、終了後の懇親会も楽しかったです。
今年も全国大学ビブリオバトルが開催予定です。
zenkoku.bibliobattle.jp
各地で予選会も開催されているので、学生の皆さんはぜひ挑戦してみてください!