社会人になってもビブリオバトルを続けるということ

こんにちは。猫子です。

昨日、紀伊國屋書店新宿本店で開催されたビブリオバトルに参加いたしました。

store.kinokuniya.co.jp

紹介本等に関しては別途まとめますし、速報形式で知りたい方は下記のTwitter(現"X")をご覧ください。

終了後の懇親会で、地区決戦に参加された学生さんから「社会人になってもビブリオバトルを続けるモチベーションってなんですか?」と聞かれたのでゴニョゴニョ答えたんですが、思い返しても割と自分にとって大事な話をしていたのではないか?と思ったので、改めて記事にまとめようと思います。

私は2010年に紀伊国屋書店新宿南店(当時。現在のBooks Kinokuniya Tokyo(洋書専門店))で開催された全国大会の予選会に参加したことが、ビブリオバトルを体験するきっかけになりました。

この時にチャンプ本に選ばれなかったことが悔しすぎて、当時通っていた大学で(やや強引に)友人を集めて昼休みにビブリオバトルを開催し、初めてチャンプ本に選ばれた時には全身の血液が逆流する感触があるほど興奮し、午後の講義に集中ができなかった程だったことを覚えています。

で、現在2025年に至るまで、休日や空き時間等に合うバトルがあれば参加している。という状態です。

学生の時は「ビブリオバトルの全国大会に出るんだ」という明確な目標があり、紀伊國屋書店さんや有隣堂さんなどの書店から、カフェスペースなどを借りて広く参加者を募る形式の開催が都内各地で活発だったことから、とにかくいけそうなバトルは行く、という状態だったと思います。

参加するたびに知り合いが増え、面白い本も知ることができて自分の世界も広がる、という感覚が気持ちよかったですね。

何より「とにかくビブリオバトルっていう超面白いゲームがあるんだけど知って欲しいマジで」というモチベーションもギラギラと持っており、「今めっちゃ面白いことやってんだよ!」と一人でも多くの人に伝えたいと思い、Twitterでバトルの様子を呟き続けるようにしました。

で、思い返すと、当時はチャンプ本に選ばれなかったらとにかく落ち込んでました。

好きな本が選ばれないと、まぁ悔しい。

目を泣き腫らすほどではなかったけれど、毎回それなりに落ち込みました。

自分はすごくその本を楽しんだのに、面白さ、楽しさが伝えきれていなかったのかなぁ、と忸怩たる思いを持ちながら酒を飲む、あるいは帰路につくことが多かったです。

だからこそ、終わってから「あなたの紹介本、すごく気になりました」とか「さっきネットで買っちゃいました」とお声をかけていただけると暖かいものが心に沁みました。

また、書店で開催されるバトルに集まる人たちはみんなべらぼうに上手かった。
あらすじや内容を聞くだけで「絶対おもしろいよ!」と確信できる本を選びつつ、どうしてその本を選んだのか、読んで何を感じたのかを明確に語れる方々ばかりで、毎回「そう発表するんだ!」と新鮮な驚きがありました。

これが変わっていったのが、社会人になってしばらく経ってからだと思います。

学生の頃と比較すると、バトルの参加数そのものは大きく減少しました。

ある時「『ビブリオバトルに参加する機会が減った』ということは『ビブリオバトルを大事な時間とするべき』ということなのでは?」と思うようになりました。

何より、対面で行うビブリオバトルは目の前に自分の話を聞いてくれる、生身の人間がいるわけです。日常の忙しい時間の中から、その日のビブリオバトルに来てみようと思ってくださっているわけです。

これ、すごいことでは?

定期開催されているビブリオバトルでもなければ、目の前の方と再会する可能性って限りなく低いわけです。
そんな人に「私はこの本が面白いと思うのでおすすめしますよ」と伝えられるって、素晴らしいことなんじゃないでしょうか。

こう思うようになってから「チャンプを取るためにビブリオバトルをする」という目的が「自分が持ってきた面白い本について知ってもらう」に移動しました。

こうなるともう、紹介できるだけでOK。満足します。
だって目の前の人に知ってもらえたんだもの、それだけで奇跡。ありがとう神様。今日はハッピー!めちゃいい日になった!!

で、ここ数年はこれに+αな変化がきています。

それは「投票の時に『ぎゃ〜〜どれに投票するかめっちゃ迷うんだけど〜〜〜』と思ってもらう」こと。

ビブリオバトルはゲームの最後にチャンプ本を決める投票をするわけですが、この時に「迷う」って状態になるのは一種幸せなことだと思います。

だって「あれもこれも面白そう!読んでみたい!」って思わせたことになりますから。
そうなったってことは、自分の紹介した本が面白がってもらえたってことじゃありませんか。いいじゃん。

あと、終わってから参加者同士で「これよかったです」・「これ迷いました」という会話が聞けることがすごく楽しい。この時に「あ、面白がってもらえたんだ」と心の中でニヤリとするわけです。

...というわけで、今後も「面白そうで投票先に迷う」と思ってもらえるような、良い本を探して楽しくビブリオバトルしていきたいと思います。

【告知】11/29(土) @立教大学池袋キャンパス・シンポジウム「可能性としてのベ平連——地域の運動経験からいま、何を受けとるか」

こんにちは。猫子です。

今回はお知らせです。

論文集に寄稿しました

諸々バタついて告知が遅くなりましたが、私がコラムを寄稿した論文集『可能性としてのベ平連 地域の運動経験と未完の記憶』がいよいよ出版となります。

www.minervashobo.co.jp

書影。 タイトルは『可能性としてのベ平連 地域の運動経験と未完の記憶』。白地にグレーがかった青で、ヘルメットを被ったり、旗を掲げたり、ギターを抱えたりして人々がデモをしている写真が写っている。 帯は黄色っぽいオレンジで、次の文章が書かれている。 「オーラルヒストリーと史資料の発掘・渉猟から現代史を掘り起こす 多彩な運動がかつてあった ミネルヴァ書房

私は1972年に神奈川県の横浜市相模原市で起きた「戦車闘争」について、自分の修士論文をベースにまとめたコラムを寄稿しております。
......といっても約7,000文字ほどあるので、コラムにしては長いかもしれません。

この論文集の後半に収録されている「補論」は執筆者による座談会なのですが、ここではドキュメンタリー映画戦車闘争 SAGAMIHARA, YOKOHAMA 1972-20XX」に出演した時の経験についても話しています。

で、これに関連してもう一つお知らせです。

出版記念イベントのシンポジウム、やりますよ。

以下は今回の論文集と、その出版に関するシンポジウムのお知らせです。
読んでくれるだけでもとても嬉しいです。

シンポジウム「可能性としてのベ平連——地域の運動経験からいま、何を受けとるか」

 今年2025年は「戦後80年」に大きな注目が集まってきましたが、ベトナム戦争終結50年の節目でもありました。ベトナム戦争は「戦後」の日本の政治や経済がアジアでの戦争とさまざまなかたちで結びついていることを浮き彫りにした出来事でした。自らを含む日本社会がベトナムでの殺戮や破壊を支えていることへの怒りが共有され、さまざまな反戦運動が広がっていきました。日本のベトナム反戦運動を牽引した「ベトナムに平和を!市民連合」(ベ平連)は1965年に東京で発足しました。本年は、ベ平連発足から60周年にあたります。

 ベ平連は中央・支部からなる上意下達式の組織形態をとらず、規約や綱領もつくらず、参加した誰もが「ベ平連」を名乗ることができる、人びとの自発的な参加を重視する運動でした。そのため、400近くものベ平連が日本各地につくられ、多様な運動を展開しました。しかし、これまで「ベ平連」といえば「東京のベ平連」が紹介されることが多く、各地域に生まれた「地域ベ平連」の豊かな運動に注目が集まることはほとんどなかったといえます。

本シンポジウムは、「地域ベ平連」のさまざまな運動の姿を明らかにした『可能性としてのベ平連——地域の運動経験と未完の記憶』(市橋秀夫・大野光明・平井一臣編、ミネルヴァ書房、10月刊行予定)の刊行を記念して、ベ平連とその各地域での多様な展開、当事者の反戦運動ベトナム戦争以降の経験などを広く共有するためのものです。ウクライナ戦争やパレスチナでのジェノサイドが止まることなくつづき、また、日本社会が急激に軍事化されている状況のなかで、わたしたちのこれからの社会や運動のあり方、自らの生き方を考えるために「地域ベ平連」を再検討したいと思います。

■日時 2025年11月29日(土)13:30〜17:30  (開場13:00)

■会場  立教大学池袋キャンパス 14号館 3階 301教室
(東京都豊島区西池袋3-34-1。池袋駅西口より徒歩約10分)
交通アクセス
https://ikebukuro.rikkyo.ac.jp/access/index.html
キャンパスマップ

 

https://www.rikkyo.ac.jp/access/ikebukuro/qo9edr00000001gl-att/img-campusmap_ike.pdf

 

 

■主催: 地域ベ平連研究会
共催: 立教大学共生社会研究センター、科学研究費補助金・基盤研究(C)「ベトナム反戦運動市民社会ネットワーク形成についての研究」

プログラム

開会あいさつ 大野光明(滋賀県立大学教員)

<第1部> ベ平連とは何か? なぜいま、地域ベ平連なのか?
吉岡忍(元ベ平連、作家)
平井一臣(鹿児島大学名誉教授)

<第2部> 地域ベ平連 当事者の経験と記憶から 
八田紀代子(元長崎ベ平連)+ 港那央(日本学術振興会PD)
鷲野正和(元福岡ベ平連)+ 市橋秀夫埼玉大学教員)

質疑応答、全体討議

閉会あいさつ 関谷滋(元ジャテック[JATEC=反戦脱走米兵援助日本技術委員会]・ベ平連

登壇者プロフィール

吉岡忍(よしおかしのぶ): 作家。1948年、長野県生まれ。早稲田大学在学中にベトナム反戦運動に参加、殺すなバッジ制作、脱走兵支援、フォークゲリラを行う。ノンフィクション『墜落の夏』(講談社ノンフィクション賞)『日本人ごっこ』『鏡の国のクーデター』『M/世界の、憂鬱な先端』、小説『月のナイフ』などの著作のほか、テレビ番組でアフガン戦争や阪神・淡路、東日本等の災害を報道。

平井一臣(ひらいかずおみ): 日本政治史、日韓関係、鹿児島大学名誉教授。べ平連の事務局長・吉川勇一さんが残された資料との出会いをきっかけにべ平連研究、とくに地域べ平連の研究に着手。2020年に有志舎から『べ平連とその時代-身ぶりとしての政治-』を出版。近年は、日本と韓国の社会運動の関係史を中心に研究を進めている。

八田紀代子(はったきよこ): 1937年、佐賀県佐賀市生まれ。1960 年に佐賀大学教育学部音楽科を卒業後、佐賀県内の中学校に音楽教師として勤める。その後、1961年、NHK勤務の八田昭男との結婚を機に、長崎県長崎市に移住。一時、市内の中学校に勤めるが、1962年に長男が生まれ、退職。1968年1月末に結成された長崎ベ平連の活動に結成当初から関わる。夫の昭男が長崎ベ平連の事務局長であったこともあり、活動開始後から徐々に自宅を長崎ベ平連の事務局とする。昭男の転勤が決まり、1969年9月に福岡県福岡市に引っ越すが、その後も現在まで長崎ベ平連の仲間たちとの交流を続ける。 

港那央(みなとなお): 東京外国語大学大学院総合国際学研究科博士後期課程修了、博士(学術)。現在、独立行政法人日本学術振興会特別研究員-PD(立教大学)、津田塾大学非常勤講師。博士前期課程在籍時より、祖父母が関わっていた長崎ベ平連の研究を始め、現在もオーラル・ヒストリーの実践によるベ平連研究を継続している。

鷲野正和(わしのまさかず): 無職、友人たちと野菜つくり、保護司。1950年福岡生まれ。高校3年の時、ベトナム戦争に反対したいと考えるが、どうしたらよいかわからず、1歳年上の東京在の従姉からべ平連のグッズを送ってもらい、一人べ平連を始める。父親の東京転勤で、1968年6月の日比谷公園でのべ平連の大デモの端っこに参加。新宿西口のフォークゲリラも現地で聞いている。その後、父親の転勤で福岡に戻り、当時浪人中の仲間と出会う。十の日デモ等に参加する中で、福岡のべ平連に巡り合う。1971年建設中の岩国ほびっとに参加。1973年末福岡に戻る。2022年ほびっと50周年の企画を岩国で開催。これで思い残すことはなくなった。

市橋秀夫(いちはしひでお): イギリス近現代社会史、埼玉大学教員。かつて埼玉大学に所蔵されていた地域ベ平連資料(現在は立教大学共生社会研究センター所蔵)と出会い、福岡の十の日デモやベ平連参加者のオーラル・ヒストリーと文字史料の蒐集をはじめる。北九州の山田弾薬庫輸送阻止闘争など、福岡におけるさまざまなベトナム反戦運動や米軍基地撤去運動についても調査継続中。


市橋秀夫・大野光明・平井一臣編 『可能性としてのベ平連——地域の運動経験と未完の記憶』 ミネルヴァ書房 2025年10月刊行 予約受付中(予価 5,500円+税)
https://www.minervashobo.co.jp/book/b666405.html

序 章 地域べ平連研究の意義・視座・課題――その意義・視座・課題(市橋秀夫・大野光明・平井一臣)
第1章 「ベトナムに平和を!」神戸行動委員会からベ平連こうべへ――神戸のベトナム反戦運動八年の経験 (黒川伊織)
第2章 ベ平連運動における地域の「発見」――千葉ベ平連三里塚闘争の出会いを手がかりにして (相川陽一)
第3章 沖縄ベ平連と反安保連合――1960年代後半の沖縄をめぐる政治・運動の変化のなかで (大野光明)
第4章 ベ平連にとっての「1968年」――福岡と北九州 (市橋秀夫
第5章 キャラバンから見る地域ベ平連――全国縦断日米反戦講演旅行から九州キャラバンへ (平井一臣)
第6章 ベ平連と女たち――結成期の長崎ベ平連を中心に (港那央)
第7章 「反戦のための万国博」にみる地域ベ平連 (大野光明)
第8章 初期『AMPO』からたどる「国際連帯」の展開――一つの「ポスト・べ平連」運動史 (松井隆志)
第9章 ベ平連の「アーカイブズ」再考――残されたもの、そしてこれから (平野泉)
補 論 現代史研究の方法と史料について――執筆者による討議
コラム (関谷滋、高木恒一、宮本皐、平田雅己、市橋秀夫、港那央)

以上です。

企画展「団地と映画ー世界は団地でできている」@高島屋資料館TOKYOに行ってきたよ

こんにちは。猫子です。

団地と映画展の入り口にある看板

先日、東京は日本橋にあります、高島屋資料館TOKYO(高島屋本館4階)の企画展「団地と映画ー世界は団地でできている」を拝見しました(※入館料無料、8/24(日)まで)。
https://www.takashimaya.co.jp/shiryokan/tokyo/exhibition/

集合住宅によくある郵便ポスト。参加したクリエイターの自己紹介になっている。

全体としてはこじんまりした展示ではあるんですが、参加クリエイターの自己紹介が郵便ポストとその中身(是非開けてみてほしい)だったこと、注意事項が掲示板に書かれているなど「団地あるある」な形から丁寧な考察まで、各参加メンバーの熱量が高く、濃厚な読み応えがありました。

実際に展示に貼られていた掲示板。

字がびっしりと書かれたパネルを読みながら、院生時代にお会いしたある先生が『団地は歴史学の研究対象になる』と力説されていたことを思い出します。

団地に限りませんが、なぜその土地なのか、建て方はどうするのか、元々住んでいた人たちはどうなるのか…などなど、巨大建築だから建設前から考えることがたくさんあります。その時々の政治状況にも左右されます。さらに集まってくる人々も多くコミュニティの様子も様々で……ということで小説や映画であれ、考察の幅はとても広く深いものになります。

私自身は団地に馴染みはありませんが、書きながら振り返っていくうちにどうも「なんだか面白いぞ」という部分はしっかり伝播しているようです。

ちなみに、開催場所が日本有数の高級百貨店(日本橋高島屋S.C本館、しかも建物自体が重要文化財)の中という点もユニークだと思いました。この空間で論じられる団地の暮らし、つまりは「日本の中流階級の暮らし」という状況は果たしてエグいのか高尚なのか……。

是非ご覧になってみてください。

【メモ】個人の権利に侵略してくる国家とは/TATAMI

観ていて胃がねじれそうだった。

今現在のニュースを見ていても、現在進行形で胃どころか内臓そのものがねじれそうになっている。

だからこそ、この映画を見たことを書いておきたいと思う。

映画「TATAMI」のパンフレット(表紙)

映画「TATAMI」のパンフレット(表紙)

 

mimosafilms.com

ジョージアの首都トビリシで開催中の女子世界柔道選手権。イラン代表として出場中の選手:レイラ・ホセイニは、順調に勝ち進む中でイラン政府から「敵対国のイスラエルとの対戦を避けるため、棄権しろ」と命じられる。

あと少しで金メダルに手が届きそうな状況での無茶な要求。一方で母国にいる家族は秘密警察に狙われ危険が迫っている。追い詰められていくレイラの選択は......?

イラン政府はイスラエルを国として承認しておらず、イスラエルが行なっているパレスチナ占領政策にも批判的で、中東各国の中でも比較的強硬な態度を取り続けている国の一つである。それもあって、国際的なイベントでイラン人とイスラエル人が対面しないようにあらゆる手段をとる、というのがこの映画を見る上でのポイントになると思う。

※念の為、外務省の「イラン・イスラム共和国」についてのページを貼っておく。

www.mofa.go.jp

私自身も現在進行形の、パレスチナに対するあらゆる暴力には反対だ。特に意図的に支援物資の流通を止めているイスラエルにはつくづく腹が立っている。

だから、この映画を見た時はちょっと動揺した。

イスラエルに渋い態度を取り続ける姿勢が、最終的にスポーツの場に、それも個人競技まで影響してしまうことにギョッとしたのだ。
自分が正しいと思っている思想信条が、個人を締め付ける枷になっているのかもしれない、という面を見せられていることになる、と思った。だから辛かった。

パンフ記載の情報によると、イスラエル出身選手との対戦を防ぐのは「試合をして負けたら国としてのメンツが潰れるから」なのだそうだ。

いやなんだそれ???
そんなに重視するの???

スポーツの国際大会は何かと「選手が国を背負う」形になりがちだ。でも私は、最終的には国よりも「個人が何をやったのか」という話になると思っている。つまり国のことは二の次になるのでは、という考えだ。

しかも映画ではチラッとだけど、イスラエル出身の選手とレイラが顔見知りで、家族の近況を話し合うような親しい中であることも描かれている。
推測だけど、柔道を通じて技を研鑽しあう中で、何度も試合をする機会があり、話す機会もたくさんあったのではないだろうか。

あとさらにやらしいのは、まずはレイラの監督であるマルヤム・ガンバリに圧力がかかり、そこから選手と監督の人間関係を崩しにかかってきていること。こうするとまず「監督に言われたから」という体を装えるので政府のせいには見えなくなる。レイラが抵抗すると「監督の指示を聞かないわがままな選手だ」となる。ずるいやり方だ。

レイラが抵抗を続ける中、大会関係者やレイラのファンを装ったイラン政府の高官が近寄って、秘密警察に捕まった父親のビデオメッセージを流すなど、あらゆる手段で「棄権しろ」というメッセージを伝えてくる。

一方で、大会関係者がレイラの異変に気がついてなんとか助けようとしていることが強烈な救いになる。

「もしかして脅されていますか?」と声をかけるステイシー(※大会の進行を見ているスタッフ)や、大会に常駐しているお医者さんが「私は母国を離れていてね...」と話しながらレイラの傷を手当てしてくれるシーンはじわりと優しさが沁みる。

大きな脅威に脅され、生命まで危なくなった時、それでも個人が差し伸べる手は暖かいし無駄にはならない。むしろ「絶対に無駄にしない」気持ちが後々まで影響を与えるんじゃないか、と思った。

もう一つ、この映画がイスラエル出身のガイ・ナッテイヴとイラン出身のザーラ・アミールという2人のクリエイターが協力して生み出したものであることも重要なポイントになる。
政府同士は対立するけど、個人同士はそうではないし、協力して一つのものを作り上げることもできる。という実例を生み出している。

この映画に関わったイラン出身のスタッフが全員亡命せざるを得ないこと、この映画がイラン国内で上映禁止になっていること、という悲しい実態はあるけれど、それも含めて現在のイランの実態を広く伝えること、そして白黒で撮影された、シーケンスとしてもとてもかっこいい試合シーンを通じて、柔道というスポーツの広がりも体験できる一作だ。

ここまでイラン政府のことを悪く言ってきたが、イランという国の良さを知る方法もあるので書いておきたい。

掲載されているモスクの写真はどれも圧巻。美の殿堂とも言える景色ばかり。

また、イランのアートを取り入れた雑貨を販売している「PERSIAN TAG」も素敵なのでおすすめだ。特にスマホケースは何年も愛用している。

www.persiantag.shop

特にPERSIAN TAGのおかげで、イランはいつか行ってみたい国の一つになっている。
どうか早く、限りなく速やかに、攻撃が止みますように。
今生きている人たちの安全が確保されますように。

【宣伝】横浜市・大佛次郎記念館でのビブリオバトル開催決定

こんにちは。猫子です。
今年も大佛次郎記念館でのビブリオバトルに関わらせていただくことになりました。

osaragijiro-museum.jp

僭越ながら、私は9/27(土)の回で司会を務めます。
この時はテーマ展示「藤井健司×大佛次郎『帰郷 Homecoming』」も解説付きでご覧いただける貴重な機会です。
 
各イベントの詳細やお申し込みについてはURLをご覧ください。
皆様のご参加をお待ちしております!
 
★9/27(土) 13:30〜15:20
 みんなのビブリオバトル
 ※小学生以上なら誰でもOK
 テーマ「旅」
 ※終わったら有志で懇親会をするべく、元町・中華街に繰り出すかも?
 
★11/2(日) 13:30〜15:20
 ※全国の中学1年生〜高校3年生が参加OK
 テーマ設定なし
 
★11/29(土) 13:30〜15:20
 第13回 ミニビブリオバトル
 ※全国の小学4年生〜6年生が参加OK
 
特に11月の小中学生向けは初めての方におすすめです。
大佛次郎記念館横浜市内の小学校でビブリオバトルのレクチャー行った実績があるので、フォローも万全。
ちょっとおしゃれな空間で、リラックスしながら楽しめます。
 
皆様のご応募、お待ちしています。

今月読んだ本・みた映画【2024年12月編】

書籍編

『賭恋ロマネスク〜大正悪役令嬢と最狂マフィア〜』

 Twitter(現自称"X")で試し読みの話が流れていたのを見て購入し、面白くてそのまま単話版を購入していたシリーズ、ついに単行本化!🎉

 私自身あまり「転生もの」は読みませんがこれは好きです。

 大正時代を舞台にした乙女ゲームの世界に、ゲーム中で主人公のライバルとなる「悪役令嬢」の"瑠璃"として転生してしまった女性。しかし場面は瑠璃が主人公の暗殺を中華系マフィアの"白雪(はく)"に依頼する場面でした。白雪はゲーム内でも「必ずバッドエンドに辿り着く」ことで有名な攻略対象。対峙した彼女の運命は?

 「転生もの」って転生前の主人公の顔を変にぼかしていたり目を描いていなかったり...という暗黙のお約束?とも取れる描写が多いのですが、私はそれが暗に、キャラクターを物語上できちんと扱っていないように見えているようで正直苦手です。ただ、この作品はそれがないんですよね。

 また、瑠璃ちゃんは何より主人公カップル推しなので、基本的にはゲームの流れを大事にする思いが強く、イレギュラーであることを自覚しつつの行動がどのような影響をもたらすのかを読者としてもハラハラと見守るわけです。

 単話版はさらに斜め上の展開が出てきており、単行本にまとまることも楽しみです。

『雪と墨』第6巻

 こちらも引き続き追いかけているシリーズの1冊。

 フレイヤとネネオの関係にはずーっともだもだしつつも目が離せないのですが、武器工場で働く人たちの本音を聞くシーンにちょっとウッ...となりましたね。

十角館の殺人

 実は人生初の綾辻行人作品でした。

 ツアービブリオさんで参加した「無人島deビブリオバトル」で紹介されていたのでせっかくだし読むかぁ、と思って読み出したところ、電車で何回か乗り過ごしそうになったぐらいぐいぐい読んじゃいました。ミステリーってすごい。

 もうあたまが沸騰しそうなくらいの展開だなぁと思ったんですが、こりゃ2周目も読んじゃいますねぇ。

『全裸刑事チャーリー』

 全国大学ビブリオバトル2024のグランドチャンプ本、結局気になりすぎて購入してしまいました。zenkoku.bibliobattle.jp

 「ヌーディスト法が施行された日本」という舞台を、国政という大舞台から各事件の登場人物名に至るまでこれでもかと見せつけつつ、ヌーディストとして刑事を務めるチャーリーと着衣組(要は普通の警察官)の七尾のやりとりに、納得するやら首をかしげるやら...わりかし下ネタ満載なので何度か休憩しつつ読みました。

 作者さん、泥酔したか何かでこういう話を思いついたんじゃないかなと勝手に想像しています。

 始終ヌーディストの描写はコメディタッチなのですが、よく「だらしない体型のおっさん」ばかりなりがちであることや、性別違和のある人が犯人になった回があるので、ネトフリで配信している映画「トランスジェンダーとハリウッド 過去、現在、そして」を思い出しました。

www.netflix.com 今後はもっと幅広いヌーディストが登場してもいいんじゃないでしょうか...。

『急な「売れ」に備える作家のためのサバイバル読本』

 何らかの「作家」志望者は買ってください。そして読んでください。

 Amazonで電子版が購入できるようですが、自分はBOOTHで紙版を購入しました。

booth.pm

 一般的に、なんらかの形で売れること・大勢の方に自分の作品を知ってもらうことは嬉しいことだと思うのですが、好ましい形で売れるとは限らないこと。その分のストレスをどう管理するのか、というノウハウは同じ作家同士でしか理解し合えないこと、などなどの経験談が満載です。

映画編

劇場版忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊 最強の軍師

sh-anime.shochiku.co.jp

 え、年納めに最高の映画が来た...!!!

 「忍たま」はあまり詳しくありませんが、予告編が出た段階で忍たまオタクの友人が「毎日観に行かなきゃ!」と話していたので絶対面白いやつだ、と思って楽しみにしていました。

 良さが無限に語れそうなので諸々は伏せておきますが、お子様と一緒に楽しめるファミリー映画の体裁は保ちつつ、城攻め・殺陣・忍術・物流などなど様々な視点で深い考察ができるすごい映画の一本です。

映画 忍たま乱太郎

eiga.com

 こちらは配信で視聴。「〜軍師」のクライマックスが1作目の映画で出てきたお城だよね?という感想を見かけて気になっていたところ、ありがたいことにdアニメストアで視聴できたので拝見しました。

 '96年という年代や初期の忍たまアニメの雰囲気を懐かしみつつ、物語の発端が「黒色火薬に使う硝石が盗まれた」というところなのが流石...手を抜いてない...。

今月読んだ本・みた映画【2024年11月編】

書籍編

カウンセラーは何をみているか
レペゼン母

 

映画編

コララインとボタンの魔女

eiga.com

侍タイムスリッパー

www.samutai.net