スキンケアisNOT「女々しい」/伊藤聡『電車の窓に映った自分が死んだ父に見えた日、スキンケアはじめました。』

本当は昨年12月に読んだ本として入れるつもりが、予想外に長くなってしまったので別記事としてまとめることにした。

伊藤聡『電車の窓に映った自分が死んだ父に見えた日、スキンケアはじめました。』

面白かった!

もともとはラジオ「アフター6ジャンクション」で著者がスキンケアについて話したことがきっかけで、それを深掘りして書かれたのが本書だという。

↑関連すると思われるツイートを発見。念の為記載しておく。

https://x.com/after6junction/status/1478341829561298945?s=20

https://x.com/after6junction/status/1478341829561298945?s=20

当該のツイートが見つけられないのだけど、「国際男性デー」にちなんで「男らしさとは何か?」というテーマで本を紹介されていた方がいて、それを見て面白そうだと思って手に取った。

forbesjapan.comそれまで全くスキンケアなぞ興味がなかった著者が、コロナ禍を経て久々に出社をした時にふと電車内で顔をあげ、自分の顔の老け具合に愕然とする… 何かしなくては、と思ってスキンケアに挑戦するが、想像を絶する未知と楽しさが広がっていた…

私は化粧をそれなりにするけれど、化粧品にそれほど詳しくはない。
けれど、メンズにおすすめな化粧品メーカーの紹介はどれも正確で読んでいてびっくりした(ロート製薬の製品は私も日頃お世話になっている)。

「男性ならでは」とあえていうけれど、もともとカルチャー系のライターとして活動されていた方で、新しいものに出会うと好奇心からどんどん深掘りし、自分の知っている知識の枠組みではこれに当てはまるかな? と考えて推測していくところが非常に面白い。

それゆえ、普段は想像もしないような角度からのコメントがとても秀逸だ。

スキンケア製品とギターエフェクターのビジネスモデルはほぼ同一(p.54)

化粧品をこんな視点で見たことないわ!笑

なお、p.57のイラスト図解も的を得ていて傑作である。

さらに、スキンケアから始まった自身のケアは、体全体、ひいては健康そのものへと関心が向かっていく

多くの男性にとって、体の不調があった際にまず取る手段は『放っておく』である。何もしないでおくのだ。ひげを剃った後、肌がひりひりする。放っておこう。歩くと足の裏が刺すように痛むことがある。放っておこう。立ちくらみする回数が妙に多くなった。放っておこう。どれもきっと大したことはないはずだし、すぐ病院に行くような神経質な人間にはなりたくない。それになにより、わざわざ病院に行くなんて面倒くさいじゃないか。『様子を見る』といえば聞こえはいいが、結局は何もしない。体の不調などという瑣末な問題は、意識の外へ押しやって考えないようにするのだ。(pp.104-105)

引用した前後については読めば読むほど(申し訳ないのだが)自分の父親の姿が目に浮かぶのだ。ゴルフが好きなのに普段からクラブを振ったりすることは全くせず、休日には「YouTubeでゴルフ番組を見ること」をトレーニングと呼んでいる。ゴルフ場からの帰りには「どうしてうまくいかないんだろう...」と愚痴ってみせる。

いやまずは筋トレしろよ。

筋トレする筋肉がないならこの動画やってみろ!!!効くから!!!

youtu.be...とでも言いたくなるのだが、言えば言うほどヘソを曲げるので絶対に言ってやらないことにしている。

 

話がそれちゃったけど、とにかく、体のケアを男性は怠りがち。というのは体感としても少しわかるような気がするのだ。

この一冊を通して、日頃から自分の体をケアをしておくことは悪いことでも、女々しいことでもないのだけど、案外男性ってそれに縛られてません? というお話になっている。

一方で、スキンケア(そして化粧)することに壁を感じることもある、という話にも言及している。

この辺りは劇団雌猫『だから私はメイクする』あたりを見てもらうと実感しやすいと思う。

上記をコミカライズしたのは下記2冊。

パワフルであっけらかんとした各エピソードが、シバタヒカリさんの綺麗な絵でより読みやすくキラキラとしていておすすめである。

正直、「キレイになってどうするのだ」と聞かれても、ただ「やっていて気分がいいから」と答えるしかないのではないか。理由がなくても自分のことをケアしていいんじゃないだろうか。