2024年、座右の書とともに/四方田犬彦『人間を守る読書』

昨年について書きたいことも溜まっているのだけど、新年が始まったので一旦それを脇に置いて、私の座右の書のことを書きたいと思う。

四方田犬彦『人間を守る読書』(文春新書)

四方田犬彦『人間を守る読書』(文春新書)は、私の「座右の書」だ。

大袈裟ではなく、この本と出会っていなかったらもっと早く人生を終えていたかもしれない。今でも大真面目にそう思う本である。

もう人間辞めちゃおうかな、と思うたびにこの本を開き、まだ知らないことがある、面白そうな本がある、図書館で探そう、読んでみよう、と思うことでなんとか人間として生きていけているところがある。

そして、最近何度もこの本を想起する理由としては、パレスチナで起きている虐殺行為にある。

www.aljazeera.com(※とりまAljaeeraのニュースサイトから)

『人間を守る読書』は、著者がある時期に触れた155冊の書評を集めた本である。内容は、

第1章 生のもの
第2章 火を通したもの
第3章 発行したもの
第4章 読むことのアニマのための100冊

...に分けられている。
書評自体は各媒体から集められており、基本的にどこから読んでもOKになっている。

著者は冒頭で「人々がお互いに不寛容になってきている助教だからこそ、あえて書物を読まなければいけないとおもうのです。書物というのは他人が考えていることです。凡庸にして古臭いように聞こえますが、他人の声に耳を傾けるという行為こそが、今必要とされているのではないでしょうか(p.8)」と語る。

出版当時よりもずっと切実に響く内容ではないだろうか。

そしてこの本、パレスチナイスラエルの関係に言及した本が多いのだ。

初読時はなんでこんなにパレスチナ問題が多いのかなぁと疑問に思っていたのだが、昨年から報道されている内容を見てようやく問題の深刻さを感じることができた(遅いんだけどね!)

もちろん「パレスチナ問題」以外にも映画・文学・料理まで、取り扱うジャンルは本当に幅広い。

以下、作中で言及されている「パレスチナ問題」関連の書籍を列挙してみる。

全部は読めていないし、ざっと見返して書き付けたので抜けたところもあるかもしれない。気になるところは『人間を守る読書』を手に取ってみてほしい。

エドワード・W・サイードオリエンタリズム
ジョー・サッコパレスチナ
重信房子ジャスミン銃口に』
エミール・ハビービー『悲楽観屋サイードの失踪にまつわる奇妙な出来事』
ジャン・ジュネ『恋する虜 パレスチナへの旅』
エドワード・W・サイードパレスチナへ帰る』
アミラ・ハス『パレスチナから報告します 占領地の住民となって』

あと、やや今回の主題からは外れてしまうけど、パレスチナを考えるならユダヤ文化も知っておかないとなぁとも思うので、言及されている一冊をここに記載する。

クロディーヌ・ファーブル=ヴァサス『豚の文化誌

正直、私はただニュースにオロオロするばかりで何にも問題解決に繋がることはできていないのだけど、「今、この本が存在する」と言及することが、私にできる抵抗手段の一つだと思うのだ。

昨年は多忙を理由に本が読めなかった分、今年は積読の消化も含めてたくさん読むぞ、と決意を改める。

今月読んだ本・みた映画【2023年11月編】

遅っ。やばいぜこの更新頻度。
それでも書かずにいられない。行くぞー!

書籍編

『ホテル・メッツァペウラへようこそ』4巻

楽しみにしていた4巻〜〜〜!!!
待ちに待ったクリスマス。当然ホテルはシーズンなので準備で大忙し。

ジュンはお世話になったみんなにクリスマスプレゼントを贈ることを思いつくが...。

クリスマスといえば、もはや世界的な行事になっている印象ですが、だからこそ、国や地域によって過ごし方が大きく違うところは見ていてとても楽しいです。

この巻で描かれる「故郷から遠い場所に住んでいる人が思いを馳せる」という場所のお話は切なく沁みます...。

あと、ジュンの過去が一瞬ちらつくけどめっちゃ凄惨なことになってますが...今後大丈夫でしょうか。まだまだ続きが楽しみです。

『5分で語れ!:チームでビブリオバトル!』

11/19に国分寺ブックフェスに伺ったとき、作者の赤羽じゅんこさんがビブリオバトルに参加されていて、そこで興味を持ち、さらに表紙イラストからなんとなく目が離せなくて購入しました。

ビブリオバトルって始めたての頃は本当にうまくいかないんですよね...。
自分としては全力を出したつもりなのに、後から聞くと声は小さいわ、喋りは早いわ、余計な話題で5分を使い切ってしまうわ...童夢くんの様子を見て、自分がビブリオバトルをやり始めた頃の悪戦苦闘を思い出しました。

サークル仲間から「花岡さん、そんなに紹介上手くないですよね」って言われたなぁ〜〜〜今でも時々思い出すなぁ〜〜〜〜〜。
「自分が下手だからビブリオバトルの面白さが伝わらない!」ってかなり焦ったなぁ。

まぁ、だからこそ「次はこうしよう!」という試行錯誤を重ねてうまくなっていくものですし、チャンプ本に選ばれるかどうか、や終了後に「面白かったです!」と声をかけられるかどうかで自分の話が伝わったかどうかが見えるので、そこで挑戦のやりがいを感じていたことがありました。

今は主催者として立つことも増えてきたので、楽しく、何度も挑戦しやすい環境を整えることを意識したいと思っています。

『愛がなくても喰ってゆけます』

母がよしながふみさんのファンで、『環と周』(後述)が面白そうだったよ〜という話をしたら翌日届いていた本。

学生だった頃にこの本があるのは目についていたけど手に取ることはなかったなぁ。

内容としては、漫画家として働くYながFみによる、食と仲間の日常を描いたエッセイ。お話はある程度フィクションが混ざっているものの、出てくるお店は全て実在するところ。
さらに、お店の情報も載っているので実際に食べにいくことも可能!(※ただ、いくつか移転されているお店もあったので要確認です)

読んでいて「そ、そこまで描いちゃうんですか!?」と思う部分もあるんですが、身を晒してこその漫画家だ、という胆力と、何よりこのお店めっちゃ美味しいのよ〜!というおすすめパワーも詰まった美味しい漫画エッセイです。

『環と周』

11/17に参加した泥酔ビブリオバトルで知った本。

通勤電車で読んで泣くのを堪えました。

よく衝撃を受けたことを表すのに「鈍器で殴られたような」という言い方があると思いますが、この本はどちらかというとじわっと沁みるというか、内部にスッと入って、それでいて確実に残るものがあるタイプです。

たまたま、その時代、「環」と「周」という名前を持って出会った2人、それぞれの「好き」という気持ちのドラマを描いた連作短編です。

後悔しても取り戻せない、人生の苦さを含ませつつも後味悪くは決してならない。

何か面白い漫画を、と言われたらぜひこれを、と勧めたい一冊です。

映画編

いやその、ないんだなぁこれが...。

8月とかは毎週のよーに映画館行っていたのに、10月以降は関わっていたイベントの準備でものすごく忙しかったし、11月はビブリオバトルの参加数も増えて、結局まともに劇場に行かないで終わってしまった...。

というわけで今後は参加したビブリオバトルのレポートをちょこちょこ上げていきます。

ではでは。

今月読んだ本・観た映画【2023年10月編】

更新が非常に遅くなってしまった...(※この記事を書いているのは11月)。
公私共に多忙な10月となり、自分が触れたものを冷静に振り返る時間が持てなかったのが主な要因。

それでも、10月は次の本や映画に触れたことは記録しておきたい。

書籍編

毒親絶縁の手引き:DV・虐待・ストーカーから逃れて生きるための制度と法律』

「これは絶対に必要な人がいるでしょう」と思って、コンセプトを読んだ瞬間クラウドファウンディングに申し込んでいた1冊。

camp-fire.jp友人知人を見ていても、親族からの過剰な干渉で困る人が多すぎない? と常々思っているので、どうかサバイバルガイドが行き渡って欲しいと思う。

skyroad.asia

ただ、正直言って問題の根本は「加害者から逃げる」だけでは解決せず、血縁を理由に人を追い詰めてしまう社会的な構造や制度の方が問題ではと思うので、なんとか良い方向に動いてほしいとも思う。

そして上記の中で紹介されている次のエッセイ漫画を知った。

実際の漫画については、作者さんの次のツイートから追っていくのが早いかな。

正直『毒親絶縁の手引き』を読まないと辿り着かなかった一冊なので、これはとてもありがたい。

実際に相談したいと考えている人は、下記リンクから夜逃げ屋TSCさんを知ることができるので要チェックだ。

soudan24.info

映画編

1本しか見れてねぇー!

ジェームズ・ボンドであること:ダニエル・クレイグの物語

www.wowow.co.jp007は全作品見てる! みたいなファンではないけれど、「007/ スカイフォール」・「007/スペクター」・「007/ノータイム・トゥー・ダイ」あたりのダニエル・クレイグ主演の回はいくつか見ているタイプ。

特に「スカイフォール」と「スペクター」はそれぞれAdeleとSam Smithが主題歌を歌っていて、さらに挿入の仕方がめちゃ良いので見た時はびっくりした記憶がある。

ドキュメンタリーはそもそもダニエル・クレイグがどのような役者だったのか、という点から、ジェームズ・ボンド役に抜擢された経緯、バッシング、公開後の反響などを追っていくもの。

今でこそ大正解! なキャスティングと言えるけど、抜擢後のバッシングが凄まじかったことや、過去作の撮影時に骨折(!)しながら挑んでいたことなどは全く知らず...超大作の撮影めっちゃハードやん...と見終わる頃には顔が渋くなっていた。

「007/ノータイム・トゥー・ダイ」では「次回作があるよ」と仄めかされていたけれど、こりゃ次のボンド役のハードル高いぞぃ。と思う。

さて、10月はこれぐらいで。

 

 

今月読んだ本・観た映画【2023年9月編】

ちょっとずつ気温が下がりつつある昨今。

9月に入ってからは月毎の収支を見直すため、新規の書籍・漫画の購入を控えてこれまでの積読や図書館で借りられる本を中心に見ていくことにした。
さて、どこまで節約できるかな。

今回もエキサイティングな読書だったなぁ。

書籍編

プロジェクト・ヘイル・メアリー

図書館で予約申し込みをして、確か半年以上待っていた1冊。
読書好きの知り合いも太鼓判を押していた小説をようやく手に取ることができた。

ちなみに、これから読んでみたいという人は、あまりレビューサイト等は見ずに、すぐにでも本書を手に取った方がいいと思う。

「自分が誰かわからない」という状態から、思い出すごとに明らかになっていく状況と、じわじわ迫ってくる「リミット」に目が離せずぐいぐいと読んでしまった。この場ではこれぐらいしかいえませぬ。下巻は本当に気になるので読める日が待ち遠しい。

トランスジェンダー入門

トランスジェンダー問題』を一応読み終えたものの、どうも何か自分の知識が足りないぞ...という気持ちは拭いきれず。
訳した高井ゆと里さんのTwitterの告知を見て購入を決定。

読みながらまずはこの分野について知らなすぎた、と言うことと、この書だけが正しいわけではなく、トランスジェンダーひとり一人に異なるサバイブの物語があって、もっと耳を傾けられるべきであることを感じている。

こんな短文じゃなくて、もっともっと言葉が必要。巻末の関連書籍も参考になるので検索しまくっている。

エデュケーション:大学は私の人生を変えた

電子書籍版で読了。

きっかけはぬまがさワタリさんのこちらの記事。

numagasablog.com毒親」と言う単語は気軽に使いたくないんだけど、それでもこの本を誰かに紹介するときに「いわゆる『毒親』の濃度500%な両親の元で育った人の話でね...」と言ってしまう。それぐらい強烈なのだ。

簡単に言うと、極端な宗教的原理主義の価値観とサバイバリスト思考を持つ親の元で育ち、公教育に一切触れてこなかった著者が、ケンブリッジ大学ハーバード大学で学んで博士号を獲得するまでを描いたエッセイ。

もうこの親が本当にひどくて、たとえば火傷で皮膚がなくなるような大事故が起きても、母親が手作りしたハーブのチンキ剤と軟膏を塗っておしまいにしてしまったり、思春期を迎えてボーイフレンドに会いにいくため、おしゃれする著者を兄貴が髪を引っ掴んでトイレの便器に押し付けたり、それを母親が見ないふりをしていたり...という感じ。しかもこれで全体のほんの一部。

「公教育と病院・医者は敵だ」という認識が抜けず、無茶を言って都合の良いものしか受け入れない父親と、最初は自分なりに意見を言っていたのに徐々にイエスマンになっていってしまう母親に対し、大学で歴史学や哲学に触れて学びを深め、世界の見方が変わっていく著者。「私が育った場所は間違っていた」と認識するたびに「それでも家族だから、変わってしまった私でも愛してもらえるかもしれない」という揺り戻しが何回もあって、それがとても辛い。

DV被害の支援や児童福祉に関わる人には特におすすめしたい。語りたいことがたくさんありすぎるので、今はひとまずこの言葉で締めとしたい。

天幕のジャードゥーガル 3巻

冒頭で「書籍・漫画の購入を控える」と書いたが、あくまで「控える」であって、全く購入しないわけではないのだ。

特に応援している大好きな作品とあっては。

というわけでこちらも楽しみにしていた続刊。

モンゴル皇帝の第一皇妃:ボラクチンに会うことになったファーティマ。彼女の思惑を読んで動いたつもりが、大きく動いた政局と予想外の出来事の連続で...

連載されているサイトには本編と合わせて読みたいコラムも連載中だそう。

souffle.life結構長いのでじっくり読みたい。

映画編

スーパーマリオ 魔界帝国の女神

www.tc-ent.co.jp

4Kレストアで蘇る。(人によっては)懐かしのカルト映画。

こういう機会でもなければ見ないっしょ〜という軽い気持ちで劇場へ行った作品。

出てくるのは人間化した爬虫類にマッドマックスを彷彿させるカーアクションにネバネバのキノコたち.........これ、スーパーマリオに題材を取ったファンタジーアクション映画として捉えた方が面白いかも?

自分はこういうテイスト好きですが、なんせ「スーパーマリオ」なので、「明るい子供向けの楽しい映画」を期待しているとだいぶ変に思うかも。
それでも、ゲームを映画化するという難易度の高い企画を形にしているし、無闇に「駄作」とはいえないんじゃないの?と思う次第。

SANDLAND(サンドランド)

sandland.jpこれは超良かったぞ。

というかなんで主役の渋いおっさんこと保安官のラオの声が山路和弘さんであることを宣伝で言わないんですか???

最高だったが!?

水不足にあえぐ砂漠の世界で、どこかにある「幻の泉」を探しにいくというのが大まかなあらすじ。

とにかく声優陣がとてもいい。

ゲームや機械が好きな自称"極悪"な悪魔の王子は田村睦心さん、物知りが小言がうるさいお目付役のシーフにチョーさん、能力ある軍人でありながら理想と過去の軋轢に悩む軍人:アレ将軍は鶴岡聡さん、物語の全ての元凶であり、悪知恵が働くゼウ大将軍に飛田展男さん。

凄すぎでは?

また、主人公トリオが乗り込む戦車が丸っこくてちょっとかわいらしさがあるし、砂漠なのに海パンと水泳用ゴーグルを外さない悪党一味のスイマーズもいい味を出している。

国葬の日

kokusou.jp

うーん、改めてなんじゃこりゃ、というか。

意見の違う他人と、人間関係を保ちつつ議論をする、という会話のテクニックや経験を積む場が日常生活になさすぎる。

だから政治的な話題を持ち込んだ時にどうしても意見が違うことが目立つし、同じじゃない点を攻撃しあってしまうので、今まで通り友達だよな、とはなりにくい。

そういえば、修士論文市民運動の関係者に話を聞いていた時に「昔はまだ、意見が違っても話をすることができたけど、今はお互い言いっぱなしになっちゃってないかな」という話を言われたことがある。

もしかして日本人って戦後ずっと政治的な話題を取り扱うことが苦手なまんま70年以上たってしまったのでは。という絶望的な思いにもなる。そんなんじゃ市町村レベルの施策だって議論が進まないじゃないか。

一方で自分は意見の違う相手に冷静になれないと思うこともある。

安保法制に反対するデモに参加していたころに「僕は賛成なんですよね」という学生にあったことを思い出す。飲み屋までついてきたので会話したときにそう聞いたけど、その一瞬で体にゲキレツとも言っていい怒りのような「お前は間違っている!」と糾弾したくなる気持ちが走ってしまったことがある。

もちろんそれをぶつけても相手の意見が変わるわけではないので、何も言わなかったけれども。

嫌なことは嫌って言おうか。

ストールンプリンセス キーウの王女とルスラン

stolenprincess.jp

ウクライナ発のアニメーション」と聞いて「面白そうな映画が日本で見れるお手伝いができるなら」と、非常に少額なプランだったけどクラウドファンディングに参加した一作。

アニメ文化は日本だけのものじゃないし、海外発の作品こそ日本で観れる機会はしっかり確保できるといいな。と考えているので、こうした作品に注目が集まることは良いと思う。

マジック

filmarks.comタミル語圏映画界のスーパースター:ヴィジャイの映画をいかがでしょうか?と友人から声をかけていただき、見に行った作品。

「5ルピーで診察する医者」として知られている人格者:マーラン医師の周辺で、医療関係者の失踪事件が相次ぐ。警察はマーラン医師を容疑者として逮捕し尋問するが、そこには壮大な「マジック」がかけられていた...

そもそもインド映画は情報量が桁違いに多く、全くあらすじを知らずに見に行ってしまったので、展開の速さについていくだけで精一杯。とりあえず主役の"大将"ヴィジャイを追いかけてしっかり見ていくうちに驚きの結末へ...という感じだった。

インドと日本では違う部分もあると思うけど、信頼できる医師に診てもらい、適切な治療を受けたいというのはどんな場所に住む人も変わらない。
医師になる人が増えても制度が腐敗していたら話にならないよ、というのは他人事にできない話題だ。

ちなみに、リンク先に行けばもっとまともなあらすじが読めるけど、映画の面白さを優先するならこんな書き方の方が良いのかな?と思っている。

マスター、先生が来る!

spaceboxjapan.jp多分これは静岡シネ・ギャラリーさんの紹介を見た方が絶対早い。

確かに「更生の意味とは...」なんて思ってしまったし、何がどうなってこうなっちょるんやと思わんわけでもない。けれど勢いがあるし凄みはある、うん。

パンフを拝見し、コロナ禍のインドで莫大な興行収入を上げた作品とあったので、これもまた劇場に人を呼び込んだ作品だったんだろうなぁと思う。

ちなみにこの作品、サントラが各種配信サイト(例:Apple Music)で聴ける。

Master (Original Motion Picture Soundtrack)

Master (Original Motion Picture Soundtrack)

  • Anirudh Ravichander
  • タミル
  • ¥1833

music.apple.com

さて、10月ももっと楽しむぞい。

今月読んだ本・みた映画【2023年8月編】

とても今更になってしまったけど、8月の時の話を投稿しておきたい。

SUMMERSONIC2023に行ってきたことで自分が音楽を聴かない状態が続いていたことを改めて思い知ったことがあって、そのことについてもじっくり書きたいけれど、まずは本と映画の話から。

書籍編

千年狐(1〜5巻)

1~5巻まで一気に読んでしまった。

古代中国を舞台に、千年生きてる妖怪の狐・廣天(コウテン)が自分の出自を求めて仲間たちと冒険を繰り広げる...というのが大筋のストーリーなのですが、ジャンルを主題にして語ろうとすると少し説明の難易度が上がるタイプのお話です。

シリアスなシーンでも隙間なく入りこむギャグ描写でどんな顔をしていいか分からず、「人間とは何か?」「時間とは何か?」「歴史とは何か?」という真面目なテーマを語って唸らせるかと思えば、次のページで鼻を垂らした廣天が「お腹すいた〜〜〜」とゴロンと横になる姿にほっこり...

...かと思えば背筋が凍りつくようなホラー描写あり、策略・謀略・仕事の愚痴に義理人情、人生いろいろ万華鏡、満漢全席にも負けちゃぁいないぜお好きなものならなんでもござれ、な中国古典知識とギャグと人外のフュージョンクラブハウスサンドイッチ(中華味)、とでもいうような感じなのだ。

まぁご興味ある方はぜひ ↓お試し読み↓ しておくんなせぇ。

comic-walker.com

ミスをチャンスに変えるリカバリーの技術

職場で勧められて読了。
そういえばミスをした時にどう乗り切るか、という話はあまり聞いてこなかったなと。

なんかこう、自分は仕事をするときに「作業を始める」ことばかりにとらわれてしまい、「過去に何をしたか」とか「以前どんなことで間違えたか」がすっぽり抜けるタイプで、メモに書いてもどこに置いたか忘れてたりするのでもうどうしようもないんだけど、ひとまずミスった時のリカバリー方法が具体的にわかるだけでも気持ちが違うなぁと思ってます。

ひらばのひと

ずっと気になっていた久世番子先生の最新作。
ようやく購入し、母親にも勧めたところ速攻で「続きはないの?」と聞かれる。

母よ、2~4巻も買っておいたので安心してほしい。

そういえば、かつて恩師に誘われて浅草の木馬亭に伺ったのも昔のことになってしまった。
面白くて拍手をしていたら、前のほうに座っていたおば様から「ありがとう、若い人が聴きに来てくれて嬉しいわ」と熱心に話しかけられ、よくよく話すと私が聴いていたのはその方の息子さんだったとのこと。勢いで名刺をいただいたけど結局怖くて何もしなかった。ごめんなさい。

あれから自宅近隣の寄席にすら行けずじまいだけど、生の語りの迫力と休憩時間に座席で食べたアイスのことはいまでも思い出せる。

また行きたいよ。

言葉の獣(1・2巻)

 

こちらもずっと気になっていた作品。

「言葉が獣の姿になって見える」女の子:東雲と、日本語とその表現にこだわりを持つ女の子:薬研の会話で進んでいく「言葉とは何か?」を問う物語。

本当はじっくり読む時間をとって何時間でも浸って考えたい作品なのだけど、30分ほどでささっと読み終わらざるを得なくてなんだかその時間の使い方をしてしまう自分自身に「残念」って思う。作品は悪くない。

2巻の終わりは非常に哲学的な問いになっているけれど、今後どうなるのだろう。

映画編

トランスフォーマー ビーストウォーズ ビースト覚醒

tf-movie.jpみたいもの全部詰まってた〜〜〜〜スッゲェぇぇ。

とゆーか、この予告編(↓)作っただけで優勝でしょ?

youtu.be

私は幼少期にこの「声優無法地帯」を見てキャイキャイしてた「元よいこ」の一人だけど、今でも母が「ビーストウォーズ、面白かったよね」と話すぐらい印象的な作品です。

子供はロボットの変形やアクションでワイワイしてたけど、一緒に見ている親は生き生きしたアドリブの合間に挟まる「どう聞いても対象年齢の子供にはわからないギャグ」を聴いてニヤリとできる。

そんな経験を経て、改めてかっこいい超大作で出会えたことに感謝!

古の王子と3つの花

child-film.com

できすぎ?、ありえない?、そんなの関係ない。
だってこれは「おはなし」なんだから。

ひたすらに美しい。人間の生きる力に懸けた3つの御伽噺。

ミッシェル・オスロ監督の「キリクと魔女」・「ディリリとパリの時間旅行」はそれぞれ途中までしかみておらずいまだに後悔しているのですが、美しさ・アニメーションとしての良さ・批評性をバランスよく含んだ作品で、もっともっと多くの人に見てほしい一作でした。

トルコの揚げ菓子はめちゃめちゃおいしそうで、パンフに載っているけど、一回はプロが作ったものを食べてみたいなぁと思います。

君たちはどう生きるか

www.ghibli.jp

動きの面白さで言ったら本作も負けちゃいない。

ってか、え、あれ全部手描きだったんですか...嘘...って思うぐらいヌルヌルと、いや生き生きと動く登場人物たち。

物語の合間を縫うように、散りばめられたオマージュとモチーフ、いや、見ているうちのそれらこそが物語そのものを語っているのではないか。そのように思えてなりません。

オオカミの家・骨

www.zaziefilms.com詳細は別記事に譲ります。

nekoko-hanaoka.hatenablog.com

たぶん8月はこのぐらいじゃなかっただろうか。

また何かあればつぎ足します。

では次回。

【ネタバレあり】オオカミの家/骨を見てきた

8月某日に話題のストップモーション・アニメーションの「オオカミの家(同時上映「骨」)」を見てきました。

ありがたいことに上映後にトークショーがあり、本記事にはその時の解説とパンフレット記載の内容を含みますので、未視聴の方には【ネタバレあり】と注意喚起いたします。

www.zaziefilms.com公式Twitterを見るに、次々と上映館が決まっている模様。

確実に人を選ぶ内容であり「強い抑圧/ハラスメントを受けて体調を崩した経験がある方」にはむしろ見ない方が良い内容です。

ただ、造形の面白さと題材の料理の仕方が絶妙にうまく、ハマる人、興味がある人にはぜひ足を運んでもらいたいのも事実...ただ、メンタルに不安がある方は絶対に専門家に相談してくださいね。

また「オオカミの家」と「骨」は両作品ともチリの政治・社会情勢を理解しているとより意味がわかりますし、考察も深まると思います。
ご興味ある方は公式サイトやパンフレットもぜひチェックしてみてください。

オオカミの家

そもそもは下記の予告編を見たことが始まり。

youtu.be異様、あまりにも異様。

だけど目が離せないし、気がつけば2回目の再生ボタンを押していました。

基本的にホラー映画は苦手なはずなんですが、アニメーションであること、友人に共有したら一緒に見にいくことを快諾してくれたことが後押しになり、劇場に足を運びました。

「とある宗教団体から発掘されたフィルム」という体で物語は始まります。
『我々に対して世の人はあらぬ嫌疑をかけられているが、このフィルムに写っている女性のことを知れば、決してそのようには思わないはずだ』と力強くナレーションがされます。

場面は森の中の一軒家へ。

団体で飼っていた豚を逃してしまい、罰を受けていた美しい女性マリアは、耐えられなくなって自由を求め、脱走して森の中の一軒家に逃げ込みます。
監視もない初めての自由。不安もあるけど、ありがたいことに食糧はあるし、2匹の豚という友達も見つかった。

そうだ、豚の蹄を魔法のボールで人間の手足に変えてしまえば、もっと賑やかになって楽しくなるはず。
名前は小さい方がペドロ、大きい方がアナにしよう。
ふたりとも、とってもいい「家族」になってくれるはずだわ...。

ああ、外にはオオカミがいるから、外には出ないようにしよう。家の中にいれば安全だもの。

.........。

うん。この主人公である「マリア」という女性、まぁ大丈夫じゃないわけです。

題材になったのはチリに実在したキリスト教系宗教コミュニティ「コロニア・ディグニダ(現:ビシャ・バビエラ)」。児童への性的虐待を問われ、ドイツから逃げ出してきたパウルシェーファーとその信者達が作り上げたもの。
表向きは厳しい掟を守って清貧を主とし、農作業をして静かな暮らしをしつつ、地域住民への医療サービスも提供する、というクリーンなイメージを持たれていたそうですが、内部ではシェーファーによる性的虐待や、ピノチェト独裁政権と結託して反対派の人々を拷問にかける、処刑する、死体遺棄などが行われていました。

当然、脱走者も出ていますが、コミュニティに連れ戻されてしまった人はもっと酷いことをされる、なんていうことがあったそうです。最悪だなこれ。

私は「オオカミの家」で初めてコロニア・ディグニダを知ったのですが、この団体がチリ社会に与えている影響は今でも続いており、受けた傷をどうしていくか、はまだまだ議論や対応が必要ではないかと思います。

そして「個人の意思より、団体の決まり事や総意が優先される環境」を背景にした支配・被支配の関係は世界中、いや家庭の中でも十分に起こっていることです。

凄惨な歴史的事実をベースにしつつ、グリム童話の要素を織り込み、アニメーションとして作ることで抽象度を上げ、多くの人が共感できる形に落とし込んでいるのがこの映画の秀逸な点ではないでしょうか。

ちなみにトークショーで伺ったことなのですが、この映画はチリをはじめとした南米数カ国の美術館で展示物として置きながら製作が進められたそうです。
美術館に置き、ワークショップも行ったそうですが、目的の一つとして「スタジオ代がかからないように」という意図もあったのだとか。このやり方はなかなか上手いなぁと思います。

思うに、マリアはやりたいことがあっても「それはダメ」と否定される日々を過ごしていたんじゃないでしょうか。人は自分の意見を保てなくなります。しかし人間としての意思はあるため、そのギャップに無自覚な状態でも苦しくなってしまう。

マリアが初めての一人暮らしができたことは素晴らしいことだったけれど、一人きりでの生活はとても苦しかったんじゃないか。ただ、知っている家族の形が結局「誰かを決まり通りに当てはめていく」ことになるので、どうしてもそれを再現しちゃうよね...。

誰か支えになる人がいれば...とみながら思いつつ、それでも支援するには難しいよなぁ心のことだもんなぁ...と思ってしまいます。

映画「骨」のイメージ画像です。初めてこんなの描いた。

「オオカミの家」の上映前に流れる短編アニメーション。

「2023年にチリで発掘された1901年制作のアニメーション」という架空の設定で作られた作品です。

1人の少女がとある男性2人の骨を発掘し、蘇らせる儀式を行う。
蘇らせた死体と楽しそうに過ごす彼女は、そのうちの1人と結婚式を挙げるのだが......

膝に乗せた頭蓋骨を、一緒に出てきた骨でぽんぽんと楽しそうに叩く少女。
もうこの時点で「十二分に罰当たりだ!」と叫びたくなるんですが、蘇らせてからも嬉しそうに死体と戯れる少女が取る行動に唖然とさせられながら物語が進んでいきます。

何も知らないで見ると「不気味だなぁ」という印象になりますが、新谷和輝さん(ラテンアメリカ映画研究)がパンフレットに寄稿している内容によると、主人公はコンスタンサ・ノルデンフリーツという女性であり、蘇らせた男性2人はディエゴ・ポルタレスとハイメ・グスマンというチリ政治史の保守派を代表する大物政治家です。ノルデンフリーツとポルタレスは長年恋愛関係にあり、3人の子供を授かっています。

......なんていう情報を聞いたら「不気味どころじゃない」内容であることがわかると思います。

ポルタレスはノルデンフリーツから度々結婚の申し出を受けても拒み続け、子供の面倒も一切見なかったとか...。

そんな人ならこの映像の結末も納得だよね。となるんですが、架空の設定で作られている故に成立する批評性のバランスは絶妙かつ危ういものなので、視聴側が飲まれそうになる分、予備知識は絶対に要るものだと思いました。

何より、比較的最近の人物を題材にここまでのものを作って、コシーニャ、レオン監督の両氏は大丈夫なのか? 今後の製作に変な影響ないですよね? とちょっと心配になります。

あと「オオカミの家」のパンフを購入すると「骨」のポスターが封入されているんですが、開いてひっくり返した瞬間腰を抜かすかと思いました...やめてちょっとそれは心臓に悪い...

最新の南米アニメ!「ペルリンプスと秘密の森」

これもトークショーで伺ったのですが、今年12月に日本で公開される「ペルリンプスと秘密の森」も南米発のアニメーション作品だそうです。

youtu.beティーザー予告編なので、もうちょっとしたら本予告が出るのでしょうか。

動物(っぽい)がいっぱい出てきそうでワクワクしますね。

こちらもカラフルな絵柄で社会問題に切り込む作品だそうなので、今から公開を楽しみにしています。

child-film.com

今月読んだ本・観た映画【2023年7月編】

7月も色々と楽しみましたよー

書籍編

『雪と墨』2巻

待望の第2巻!

調査のためにネネオの出身地である村までやってきたフレイヤ、しかし目的地に近づくにつれ、案内役を買って出たネネオ自身が体調を崩して動きにくい状況に...

この巻で一旦ネネオの話が落ち着くものの、今度はフレイヤの実家でいろいろあるような雰囲気。人は誰しも家族の問題は見ないことにはできませんね...次回、どうなる?

『大ピンチずかん』

「あるある〜」と思いつつニヤッとできる一冊。

「カバンからむかしのおにぎりがでてきた」のシーンが良いですね。
うん、私はもういい歳の大人だけど、今でもお弁当箱や保冷剤を仕事用のカバンに放置してしまうことがあります。わかる。

『刀 文豪怪談ライバルズ!』

積読を消化。

怪談や幻想小説はあまり馴染みがないけれど、東雅夫氏の選書であれば絶対に面白いはず!しかも表紙は『百と卍』の紗久楽さわ先生!買うしかないっしょ!と購入した1冊。

特にぐっと惹きつけられたのは宮部みゆき「騒ぐ刀」。
いわゆる「神通力」に長けた町娘のお初が、相棒役の与力見習い・古沢右京之介とタッグを組んで怪事件に挑むシリーズで、これはシリーズ中の中でも比較的初期のお話らしいですね。

所収は『かまいたち』だそうなので、こっちを読んでみようかなと思いました。

アンソロジーはこのように「面白かったから所収されている本を読んでみよう」・「他の作品が気になるのでみてみよう」となるので読書の幅が広がるのが楽しいところですね。

映画編

雄獅少年/ライオン少年

gaga.ne.jpTwitter(今は"X")で評判を見てからずーっと気になっていた1作。
見てみてびっくり。究極にリアルで繊細な空気感と光の表現が下支えする、伝統芸能を題材にした熱いスポ根ドラマでした。

冒頭のナレーションで解説がありましたが、中国の獅子舞は大きく「北派」と「南派」に分かれており、今回の映画で舞台となるのは「南派」。派手な装飾とアクロバティックな動きが特徴で、2人1組で演技を行います。

ちょっと走るだけでもヘロヘロに疲れていた主人公の少年:チュンが、紆余曲折を経て力強く獅子舞の演技を披露する姿に熱くなりますし、ラストが「勝利のさらに先はどうなるのか?」という話になっている構造がさらに深みを増しているように思いました。

なんと第2作目の製作・公開が決定しているそう(※下の記事参照)。こちらも楽しみですね。

chinanews.jp

不思議の国の数学者

これはもう静岡にある映画館・サールナートホールさんの紹介文がうますぎるので、まずはこちらをどうぞ。

 

https://twitter.com/Sarnathhall/status/1645677668560666624?s=20

klockworx-asia.com

数学っていうか算数の話なんですが、昔「おジャ魔女どれみ」のエピソードで、アメリカからやってきたももこちゃんが算数のテストで満点をとって、担任の先生から「数学は万国共通だな」って言われていたことを思い出しました(細かいところはちょっと違うかも)。

そもそも数学のおかげで人類の文化発展は成り立っている。

『たとえば、今年採れた穀物の収穫量を計算して、来年の収穫時期まで持つのかを考えることができなかったら人類はとっくに滅亡してるんだぞ』と話してくれた塾講師のお兄さん(確か当時は大学院生)は今は元気かしら。
言葉の意味は大人になってからようやく実感しましたわ。当時はすぐに理解ができない子供で申し訳なかったです。

数学に向き合うことで成長していく主人公と、数学を教える中で過去と向き合う警備員のおじさん、2人の師弟関係が見ていて心地いいものでした。

劇中で流れる円周率を音符に置き換えた「πソング」も美しく、数学が好きな人も嫌いな人も見てほしい一作でした。

ヴァチカンのエクソシスト

www.vatican-exorcist.jpどなたかが書き込まれていましたが、"SNSで勝手に盛り上がるサメ映画とホラー映画は絶対に面白い"、という傾向があるようです。

「ヴァチカンのエクソシスト」もその類のホラー映画なんですが、その盛り上がりのきっかけは本作のプロデューサーであるカッツ氏が日本語で呟き、数々のファンアートをリツイート(今は"Repost")して楽しんでいる様子が見えているからではないでしょうか。

ざっと見ていると、(おそらく)新日本プロレスが大好きで、部屋にジャイアント馬場の写真を飾っている様子。

私もこの盛り上がり方が気になって観に行ったんですが、予想以上にガッツリとホラー映画で、観終わってから少し体感温度が下がり、食欲もいつもより減っていた気がします。

というのも、Twitterの楽しそうなノリに影響されて「どちらかといえばコメディ要素多めのホラー映画かな?」と期待値の方向が向いていたようです...そんなことはなかったです......やっぱり怖かったよ...。

観ていてちょっと気になったのが、お話上仕方がない展開であるとはいえ、キリスト教において「女性」というのは「誘惑するもの」や「堕落させるもの」であり、「糾すべきもの」・「祓うべきもの」の象徴になりやすいのか? という点でした。

必要以上に「女性」を悪く取り扱う描写はなく、映画の良さを落としていることはなかったのですが、キリスト教そのものが持つ世界観と悪魔の邪悪さを身近に感じることができる内容でもあるため「宗教ってなんだろう」という疑問がずーっと浮かんでいます。

仮面ライダーギーツ 4人のエースと黒狐・王様戦隊キングオージャー アドベンチャー・ヘブン

geats-ohger-23movie.com

家族の付き添いで見に行ったけれど、キングオージャーに関しては完全に楽しんでましたねぇ。

元々は友人の強い紹介で見始めたキングオージャーですが、なんと面白い!
だって自分から「俺が悪者になる!」と宣言するニチアサの主人公っていました???
アーサー王物語や十二国記のような壮大さと緻密な政治劇も織り交ぜされた内容にグッと引き込まれ、合間合間で見ています。

今回の映画は主人公・ギラがいよいよシュゴッタム王国の王様になるため、戴冠式を迎えるシーンから始まります。ただし、王様になるためには一度「死者の国・ハーカバーカ」へ行き、国の成り立ちを知らなければならないとのこと...

え、これ『ギルガメッシュ叙事詩』に似たようなシーケンスがあったような...冥界くだりだったっけ...え、すごくない?

ニモーナ

youtu.be

7月の終わりにすごいもの観ちゃった!

とある陰謀に巻き込まれ、女王殺しの濡れ衣を着せられた庶民出身の騎士:バリスターが主人公。指名手配され国中から追い回される彼に、あらゆる動物に変身できる自由奔放な"バッドガール"のニモーナが手を差し伸べます。
穏便にことを運びたいバリスターに対し「どうせ悪者なんだから悪いことしちゃおうよ!」と大暴れするニモーナ。絵に描いたような凸凹コンビの二人は、果たしてバリスターの容疑を晴らすことができるのか?

ヒトからダチョウに鯨まで、何にでも変身するニモーナのアクションが痛快で、ぐるぐると回るカメラワークはまるでジェットコースターのよう。

一方でウッと来るのが、ニモーナそのものを通して描かれる「多数派じゃないことの辛さ」です。
バリスターに「普通の女の子でいることはできないのか?」と問われ、ゴリラの状態で「"普通の女の子"って何? あたしはニモーナ、それでいいじゃん」と切り返す。
ニモーナは自分のアイデンティティが流動的で、人間の女の子な時もあればサメでいたい時もある。たったそれだけなのに、周りからは「普通じゃない」とずっと爪弾きにされている。

ニモーナのキャラクター造形は、製作を務めたND・スティーブンソン氏の経験がベースになっているそうで、セクシュアルマイノリティの暗喩とも取れるのではないかしら?

realsound.jp

あと、ちょっと別枠になりますがこちらも追記します。

新作歌舞伎 刀剣乱舞

kabuki-toukenranbu.jp発表があった時からずっと楽しみにしていました。

これまでアニメ・映画・舞台・ミュージカルと多角的な展開を続けてきた刀剣乱舞。ファンの間で「歌舞伎になったらすごいよね」とうっすら話が出ていたこともあったものの、まさか実現するとは。

言いたいことはたくさんあるけど、ざっと書き出すと次のようになります。

・題材は突飛ではあるけれど、演出と織り込んだ表現が古典的で品が良い。

・お話からセリフまで非常にわかりやすい。

舞台芸術としての厚みが段違い。
 一瞬で化粧・衣装を変えるのはお手のもの。新橋演舞場のキャパシティを最大限に活かした大道具も見どころの一つ。

・ゲーム中の楽曲が和楽器アレンジされ、なんと生演奏!聴くだけで幸せ。

・座席でお弁当を食べて良いのが新鮮(舞台中は飲食禁止)。
 演舞場内の売店で買えるお菓子も美味しいものばかり。

・幕間の時間が30分あり、お手洗いにとても行きやすくて助かる。

歌舞伎は定期的に新作を発表し、上演を繰り返すことで古典になっていく、という流れがあるそうです。

今回の歌舞伎が楽しめた人にはこちらもおすすめ!という情報を見かけたので、メモがわりに貼っておきます。

www.ntj.jac.go.jp国立劇場は10月末で一旦閉場するそうなので、その前に一回劇場に行ってみてほしいというお話も。

舞台装置がとても豪華で滅多にやらない演目だそう。

10月の上旬にこのお話の第2部をやるそうなので、そちらも合わせて楽しみに。

www.ntj.jac.go.jp

 

以上!7月に楽しんだものでしたー。