今月読んだ本・見た映画【2023年5月編】

今月読んだ本と見た映画をまとめました。

書籍編

アンナ・コムネナ

もう大好き!

『うたえ!エーリンナ!』の作家さんが長編を執筆されている。しかも題材は西洋中世唯一の女性歴史家、ビザンツ皇女アンナ・コムネナ!?

ビザンツ帝国の歴史には全く疎く、コテンラジオでうっすら聞いたなぁという程度(詳細は下記動画をどうぞ)。それでもとっても面白い!

www.youtube.com勉強好きで負けず嫌い、「女だからって、なりたいものになれないのはおかしい」と考え「皇帝になって理想の国を作りたい!」と夢に向かって爆走するアンナと、正当な継承権を持ち、現実主義者な弟。幼い頃から顔を合わせればケンカばかりな2人は、成長するとともに帝国の現実に向かい合うことになります。果たしてどうなっていくのか...。

アンナに理解を示す夫との微笑ましいやり取りから、様々な方法で生き延びていく女性たちのシリアスな様子まで、ギャグと歴史浪漫のバランスがちょうどいい良作。

続きが楽しみ!

ワールド イズ ダンシング

友人に勧められていた漫画。1巻目をやっと読了。

風姿花伝』を描いた観阿弥世阿弥(鬼夜叉)の親子関係を軸に描く中世ダンスロマン。とでも言おうか。

踊りに目覚める気持ちよさと快活な身体描写が気持ちいい。

シェパードハウス・ホテル

人里離れた場所に佇むホテル。そこは迷える魂がひとときの安らぎを求めやってくる特別なホテルだった。

支配人とメイドが迎えるオムニバス・ストーリー。

こういうの弱いんだぁ...と言いつつもぐいぐい読んでしまう。続き気になるなぁ。

ヘテロゲニア・リンギスティコ〜異種族言語学入門〜2巻

 

時間が空いてしまったので、もう一度1巻から読み直したい...。

異文化同士の交流って何かと大変だよねぇ...ということも、いざその環境に置かれた時に改めて人柄が出るよなぁと思ったりする。

これ描いて死ね

世の漫画好きは是非とも手に取ってほしい。
(というか、「映像研には手を出すな!」が好きならこの作品もハマると思う)

東京から遠く離れた離島:伊豆王島で暮らす高校生の安海相は、漫画が好きで空想ばかりしている、ちょっと内気な高校生。
ある日、大好きな漫画『ロボ太とポコ太』の作者:☆野零先生のことを検索したら、週末のコミティアで新刊を頒布することが判明。

コミティア?東京??同人誌???なにそれ?というか新刊!?!?
10年以上待ち続けた☆野先生の新刊のため、「行くしかないっしょ!」と片道6,930円近くの船代を払って島を飛び出した!

初めて来た東京!大勢の人が集まるビッグサイトに圧倒されながら☆野先生のブースにたどり着いた時、そこに座っていたのは高校の担任である手島先生だった...。

この出会いから「漫画って自分で描けるんだ!」と気がついた安海は友人の赤福、さらに安海の漫画のファンで絵が上手な女の子:藤森さんを巻き込んで漫画同好会を立ち上げ、作品制作を進めていくが...。

安海達の青春ストーリーと、手島先生を中心にした大人の群像劇の2種類が同時進行し、漫画を取り巻く人間関係を多数の視点で描いているのが本作の見どころ。

また、随所に藤田和日郎先生リスペクトが差し込まれており、ファンには嬉しいところもあるかも。

もっと漫画が読みたくなる、いや、描きたくなるかもしれない。そんな1作。

日本に住んでる世界のひと

昨年話題を耳にしていたものの、行けなくて悔しかった「難民・移民フェス」に行ってきた。

note.comフェスに行くにあたり、一旦はこの本を読んでおこうと思って積読の山から発掘。

柔らかいタッチの絵と文章で綴る、各自の壮絶な人生。

すでに何十年と前から日本国内には海外にルーツを持つ人が大勢住んでおり、それぞれ不便や不自由を感じながらも暮らしていかざるを得ない。この現実に関心を持っていないのは、多数派である日本人なのではないか?と思う。

千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家になった話

海外文化、圧倒的な他者に向かい合うという意味では、こちらの本も共通するところがあるのではないか?と思って手に取った。

もうタイトルがずるい。絶対に面白いじゃんこの人。と思ってページをめくり、案の定手が止まらない。

暑苦しく「俺は俺は俺は〜」の連続であるけれど、どん底の環境からなんとか自分の好きなこと・得意なことを見つけ出して生き延びる方法を見つけた1人の男性の記録であり、ルーマニア語を例にしたマイノリティ言語の現実を描くルポルタージュであり、文芸を生業とする芸術家としての熱い想いを綴った宣言の書である。

「俺はマジョリティだから、マイノリティのことをもっと知らなければならないし、そのための作品を作りたいんだ」というくだりは「自分もマジョリティだから、やれることあるよね?」と正座して考えるし、「自然科学の本を読み耽っている方が、創作意欲が湧く」という話は染色家の志村ふくみさんのエッセイに通じるものを感じた。

 

この人も染色という芸術に人生を捧げる人ではあるけれど、一方で先輩から「染色一筋ではなく、他の分野のことも学びなさい」と教わるっていうシーケンスがある(このエッセイに載っているかどうかは忘れたけれど...)。

北関東の異界 エスニック国道354号線 絶品メシとリアル日本

読み終わってつい「おいしかった!」と思ってしまった1冊。

作者の室橋さんを知ったのは、昨年実施されていた和光大学のアジアフェスタのオンラインリレー講座お話を聞いたから。

www.wako.ac.jp「次の新刊は、いわゆる『日本にあるカレー屋さんで働く人』に焦点を当てます。彼らがどのような経歴の人たちなのか、特に茨城や栃木などの北関東にたくさん住んでいらっしゃるので、それらを取材した記録をまとめます」という予告を聞いており、ワクワクしていた。

そんな折に難民・移民フェスでブースを出していたポルべニール・ブックストアさんの棚でこの本を発見。速攻で購入!

中古車産業で財を成したパキスタン人、ロヒンギャ料理の食材店とレストランを運営するロヒンギャの方、猛烈に働いて深夜にタイのハーブや唐辛子を売りにいくご夫婦などなど...美味しい「異国メシ」の背後にあるそれぞれの人生は決して順風満帆じゃない。

特に技能実習生で支えられる農業の話には気が重くなってどうしようもないのだけれど、これが現実なのだと受け止めるところから始めたい。

デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士

韓国で映画化、日本ではドラマ化が決定している話題作。

それ以上に、私は「手話通訳士として働く友人が『リアルでめっちゃ面白かったよ』と言っていた」ことから手に取って読み始めた1冊。

実は日帰りの旅行のお供に〜と軽い気持ちでページを捲ったらその手が止められず、気がつくと電車を乗り過ごしていた。アウチ。でもこの経験はとても嬉しかった。

映画編

妖怪の孫

youkai-mago.com最近、両親が暇を見つけては映画館に通うようになった。

ある日、母親が血相を変えて「あんた、『妖怪の孫』って映画は見た方がいいよ!」と叫んだ。

ドキュメンタリー映画を見慣れていない母にとっては「初めて知った事実」でも、私にとっては卒論で日米安保条約日米地位協定を調べた時から知っていることも多く、ここ数年の日本国内の政治問題についての一端の総括ができる映画かなぁ、という印象。

でも、新たに響く人が増えるなら、このアプローチも正解だったのではないかな。

暴太郎戦隊ドンブラザーズVSゼンカイジャー

www.toei-video.co.jp家族の付き添いで観に行った映画。

何かと話題の「ドンブラザーズ」であることから、まぁ...ある程度覚悟して観に行ったわけだけど、これはOh, My God.
Going My Wayな展開と特撮のお約束でぶん回すお話にやや置いてきぼりを食いつつ、一方で登場人物の気持ちの動き方や演出は細かくて隙がないとも感じるわけで。

とある「ドンブラザーズファン」の友人に「実は映画を観に行ったんだけど...」と話したが最後、TVシリーズも含めた各登場人物について1時間ほど解説をしてもらったのはまた別のお話。

ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー

www.nintendo.co.jpもうね、"ILLUMINATION"のロゴの出し方から「「「わかってらっしゃる」」」なのよ。

私はマリオのゲームをあまりやっていない、むしろスマブラでちょっといじった程度だし、強いていうなら「ルイージマンション」を攻略本片手にやっとったわ、という程度のライトなファンだけれども、それでも「そうそうマリオなら/ルイージなら/ピーチ姫なら/クッパならこう動くよね!!」と納得ずくめでどっぷりと「マリオワールド」に浸かることができた1作。

何より劇場に見に来た人たちがみんな楽しそうなのが良い思い出となっている。マリオとルイージの帽子をかぶっている兄弟を見かけたのがとても可愛かった。

任天堂作品そのものからの小ネタが詰めに詰められた映画なので、もう1回見れないかなぁ。

メグレと若い女の死

unpfilm.com久しぶりのフランス映画。

映画に出てくる「メグレ警視」は『名探偵コナン』の目黒警部のモデルになったという有名な人物であるとは初めて知った。

ちょっと途中の「作戦」で人を危険に晒しすぎてないか...?と心配になったものの、普段見ている映画がどうしても「セリフで全部説明しがち」な傾向があるので、役者の演技と空間で語るこのタイプの映画にくらっと来てしまいがちなのだ。

ハマのドン

hama-don.jp

見終わってシンプルに「すげぇおっちゃんやのう」と感心してしまったのだが、FBとTwitterで下記の批判を見てびっくり。

juninukai.theletter.jp褒めるのは冷静になった方がいいかもしれない。

確かに横浜市の状況を普段から見ている人じゃないと、この映画の内容が本当なのか嘘なのかは判断がつきにくいと思う。

なんというか、とにかく現状が泥沼なので、実体を捻じ曲げても"ヒーロー"を求めてしまいがちなのではないかな。

でもその考え方は碌なもんじゃない。
自分の弱さに向き合わず、強いものを頼りにして、役に立たないと分かったらみんなでボコボコにする。んで次の"ヒーロー"を探す。

自分がこう思うのは、アプリゲーム"Fate/Grand Order"の第2部第6章「妖精円卓領域 アヴァロン・ル・フェ 星の生まれる刻」を攻略したことと、ゲームを元にしたミュージカル「刀剣乱舞 静かの海のパライソ」を観た時期があったから。

でもそれを書き出すとまた長くなるので、別の機会に。